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横幹連合ニュースレター

<<目次>> No.036 Feb 2014

巻頭メッセージ

活動紹介

参加学会の横顔

 
イノベーションと横幹技術  

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東京工業大学名誉教授 長田洋
 
 第5回横幹連合コンファレンス
参加報告
 
◆【横幹連合10周年企画】
【横幹技術フォーラム】掲載ページ

イベント紹介

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巻頭メッセージ

イノベーションと横幹技術

    東京工業大学名誉教授 長田 洋

  イノベーション(Innovation、革新)は、J.A.Schumpeterが1912年に著書「経済発展の理論」の中で述べたように、社会的な新しい価値をもたらすものと考えられており、同書では、モノ、資金や人などの生産要素が従来にない新たな組み合わせ(新結合)によって実現されたもの、と定義される。彼は、新結合により生み出されるイノベーションとして、① 新しい財貨すなわち新製品の生産、② 新しい生産方法の導入、③ 新しい販路、市場の開拓、④ 原料、あるいは半製品の新しい供給源の獲得、⑤ 新しい組織の実現などを挙げている。このようにイノベーションは、技術の革新のみに留まらず、広く社会への普及を促し、価値をもたらすものであり、特に新しい経済的価値は、イノベーションにより創出された事業によってもたらされている。本稿では、このイノベーションによる事業の創出と、横断型基幹技術(横幹技術)との関係について考えてみたい。
  1990年以降、多くのイノベーションが生み出され、経済的発展を支えてきた。その一つの代表例に、デルコンピューターの開始したE-commerce(電子商取引)がある。デルコンピューターはパソコンのメーカーでありながら、顧客ニーズに対応して、従来の生産・販売組織から大きく変わった生販一体のシステムを構築した。すなわち、無店舗販売システムによって顧客からの受注をインターネットで行い、その生産を直接、海外工場にインターネットで指示して管理するという事業モデルを構築して、情報技術とシステム技術を組み合わせたのである。このイノベーションは、全世界の顧客に対して、顧客の独自な製品要求に合致したパソコンを短納期で納品するという、顧客にとっての新たな価値をもたらし、その流通経路(販路)を大きく革新した。この事業モデルはビジネスモデルと呼ばれ、その後に大きく成長したアマゾンドットコムなど多くの企業の事業に適用され、その発展の要因となっている。さらにそのようにして創出された事業を、ビジネスモデルに基づいて継続的に実施する仕組みが、ビジネスシステムである。
  このように、今や事業により価値を創造するイノベーションの主要な生産要素は、知識である。そしてその知識の新たな組み合わせの手段・方法を与えてくれるのがシステムアプローチであり、システム技術、モデリング技術である。このような技術は、横幹技術によってもたらされることが多い。このように、新結合の担い手は、既存の知識や技術の新たな組み合わせや方法にあるといえる。また新技術が開発されても、それらを事業として発展させるためには、単に新製品や新サービスの提供ではなく、顧客にとって価値をもたらす仕組み(モデル化、システム化)が必要であり、それを提供するのが横幹技術の役割である。
  このような新たなビジネスモデル、ビジネスシステムにより産業を創造した例として、コンビニエンスストアが挙げられる。近年、売上高において百貨店を上回ったコンビニエンスストアでは、顧客の居住地近くに店舗を設立し、日用品を24時間提供するという新たなビジネスモデルにより、利便性という顧客価値を創造しているが、そのビジネスモデルを実現するビジネスシステムでは、日々の顧客の大量の購買データ(ビッグデータ)をデータマイニング技術により解析し、売れ筋商品の分析と顧客ニーズに合致した商品の開発・仕入れ・陳列などのきめ細かい、迅速なオペレーションが実施されている。今や、コンビニエンスストアは、顧客のライフスタイルを形成していると言って良い。このようなビジネスモデル、ビジネスシステムを支えているのが、顧客のビッグデータ解析(統計解析)技術やサプライチェーンマネジメント技術などの横幹技術である。
  以上で述べたように、近年のイノベーションは知識の新結合により社会的価値を創造する事業によって生み出されているが、その新結合において、横幹技術は極めて重要な役割を担っている。現在、日本にとって成長戦略の立案が急務であるが、その鍵となるのがイノベーションである。イノベーション創出のために貢献する、横幹技術の進化・発展が期待される。

 

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