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横幹連合ニュースレター

No.048 Feb 2017

 TOPICS

  1)第49回横幹技術フォーラム「ビジネスイノベーションが先導する第4次産業革命(IoT/インダストリアル4.0)の実現に向けた産・学・官の役割と課題とは」
日時:2017年3月2日(木)13時〜17時半 会場:日本大学経済学部7号館講堂(最寄駅 JR水道橋駅東口)

  2)会誌「横幹」が電子ジャーナル化され、J-STAGEより公開されています。 バックナンバーから最新号(第10巻第2号、2016年10月15日発行)まで無料公開中です。 詳細は、こちらをご参照ください。

 COLUMN 1

誰が最初にPDCAサイクルを回したのか - Nightingaleの改善活動

  (一社)日本品質管理学会会長 椿広計

1.PDCAを世界に知らしめた戦後日本の品質管理活動

  2015年は、日本の品質管理活動のパイオニアである石川馨(1915-1989)の生誕100周年で、品質管理の世界は国内外で盛り上がりを見せた。2015年にリオデジャネイロで開催された国際統計協会第60回世界統計会議開会式で、V. Nair会長が、産業界に最も影響を与えた統計学は、Deming-石川の統計哲学だ、というような話をされた。石川と戦後日本の品質管理第一世代が、今日世界に流布するPDCAサイクルや問題解決型QCストーリー(問題解決の標準シナリオ)によるKaizen活動といった「コトつくり」をされた、と認識されているのである。もちろん、米国では、E. Deming(1900-1993)の師匠筋であるW. Shewhart(1891-1967)が管理のサイクルの創始者とされている。しかし、ShewhartのサイクルにはActionというフェイズはない。石川が残した「日本にはActionが必要だ」との言にあるとおり、「Plan- Do- Check- Action」という体言止めのサイクルを提示したのは、やはり、Demingに共鳴した日本の産業界であろう。
  さて、私は統計学者ではなく、「統計家(Statistician)」でありたいと若いころから願っていた。統計家は、統計的方法に則って、社会問題にソリューションを提供する職種で、米国労働統計によれば、2014年現在、米国には3万名の統計家がカウントされている。日本では、統計家は、残念ながら専門職としてはカウントされていない。ただ、『統計学が最強の学問である』の著者である西内啓(1981-)の名刺には統計家と記載されていて、感激したことがある。ただ、西内以前にも統計家の真打が何名か、わが国にいたことは確かである。
  私が実際にその活動の一端を知ることが出来た真打は、西堀栄三郎(1903-1989)と田口玄一(1924-2012)である。産業界でもコニカ・ミノルタホールディングの会長を務められた米山高範(1929-2014)は、応用統計学会で特別講演していただいたが、一流統計家でもあった。ところで、西堀が統計家だというと、驚かれる方が多いかもしれない。むしろ、第一次南極越冬隊長、エベレスト登山隊長、雪山賛歌の作詞者などとして、一般に有名であった。しかし、西堀は管理図法をはじめ、如何に問題を発見し、解決するかということについてのアプローチを確立した品質管理分野の問題解決の名人であり、超一流の統計家であった。その著書『品質管理実施法』は、単純に統計的品質管理技法を講義したものではなく、統計的に問題を解決する際の着眼点を紹介したもので、あまり類例のない書籍であった。もちろん、技術立国を支えた石川ら第一世代品質管理の諸先生方も、真打の統計家だったと言えるだろう。


2.誰がPDCAサイクルを回し始めたのか?

  問題解決学としての品質管理学を確立したのは、1939年に出版されたShewhartの『品質管理の基礎概念 - 品質管理の観点からみた統計的方法』であるが、そこでは大量生産を科学にするということが強く意識されていた。ちなみに、ありとあらゆる対象を科学にできるとしたのは、「科学の文法」を確立したKarl Pearson(1857-1936)であった。Pearsonは、相関係数や適合度検定などの提案で統計学者として、統計の世界では有名である。しかし、科学史的には、UCLAのT. M.Porterが説くように、ナレッジ・マネジメントのパイオニアとしての意義が大きいとされている。
  Guinnessビール研究所のW. S. Gosset(1876-1937)技師は、1906~1907年にPearsonに「測定誤差の統計的処理」について教えを乞い、ギネスビールで用いるべき麦の品種をArcher種とする最適化を1914年に実現する。このとき、Gossetが発明し、活用したのがt検定である。
  Guinnessのこの活動は、産業界における近代統計的方法に基づく創世記の品質改善活動であり、PDCAサイクルがそのような名前は冠されずに、何サイクルも回されたことは容易に想像される。
  Pearsonらの統計家に、「統計科学」(実証科学)という新たな体系の確立を呼び掛けたのは、C. Darwin(1809-1892)の従弟F. Galton(1822-1911)であり、パーセント点や相関・回帰といった概念を創生したのはGaltonである。Galtonは、1850年から2年間の南西アフリカの探検で名を成した。彼の探検術に関する著者は今も購入可能ではなかったかと思う。いずれにせよ、西堀先生とGaltonに、探検家としての共通点のあることが面白い。その後、1860年頃にGaltonは測定データに基づく「高気圧」の発見者となる。Galtonは従兄のDarwinが1859年に発表した進化論に大きな刺激を受けて、1870年代以降「統計科学」の確立に動いたように思える。しかし、彼自身のより大きな関心は生物測定学(指紋認証の提唱者となる)や優生学であった。Galtonは、彼なりの社会改善のため、PDCAに基づくコトつくりを企図したのではないかと考えている。


3.医療改革と情熱的統計家としてのNightingale

  Galtonと同様、社会の改革を目指す「情熱的統計家」として知られたGaltonの義理の従姉がいる。看護学の創始者、F. Nightingale(1820-1910)である。Pearsonは、Galtonの伝記『Life and letters of Francis Galton』を著しているのだが、第2巻にGaltonの統計的研究をまとめている。その中に「応用統計学科教授職の提案」という節があり、その冒頭がPearsonによる情熱的統計家Nightingaleの紹介に充てられている。その部分を抄訳してみよう。
  「ナイチンゲールは、その慈悲あふれる活動で知られており、それは普通の人たちに感情的共鳴を呼んできたが、彼女の管理に関する洞察力などの性格は見過ごされてきた。彼女は偉大な管理者であるが、統計に関する熱心な学徒でなければ、管理分野での卓越的成果は不可能であった。彼女は、まさに《情熱的統計家》と呼ばれた。彼女にとって統計は、研究というよりは、信仰の対象だった。」
  ちなみに、Nelson and Raffertyが編纂した“Notes on Nightingale”の第6章は、「情熱的統計家」である。実際、Nightingaleは、英国王立統計学会会員であったし、当時、米国統計学会唯一の女性会員でもあった。
  Pearsonは、彼女のマネジメントが、基本的に統計的改善技法に裏付けられていたことや、彼女がA. Quetelet(1796-1874)をヒーローとして、彼の著書を徹底的に読み込んだことを記している。 Queteletは、1853年の第1回世界統計会議を仕切り、国際統計協会(の原型)を1855年に創生した人物である。このようにして彼女は、科学と統計学は不可分で、「最重要の学問 - 統計学」ということを信じるようになったのだ。
  Nightingaleの記述統計学に対する貢献には、今日のレーダーチャートあるいはスパイダーチャートを発明したことが挙げられる。これは、1854~56年のクリミア戦争におけるデータ分析で、戦闘で死亡する兵士の数よりも、不衛生な病院で病死する兵士数の方がはるかに多いこと、しかもその死亡率は当時最も不衛生とされた都市マンチェスターをはるかに上回り、その原因は、軍のキャンプ地の人口密度がロンドンの通常の市民の倍以上となっているためであることを示した表で、これを彼女は病院の改善活動につなげたのである。その後の1862年頃には、死亡原因究明に関する病院統計を整備し、その統計分析を推進した。この結果として重要なことは、医療衛生改革に絶大な寄与が行なわれたことである。
  彼女が、いわば病院の品質改善活動のために系統的に採取した、その現状把握のための統計には、元日に入院している患者数・さらに当該年に処置を受けた患者数・当該年に快癒した患者数、回復せず退院した患者数、死亡した患者数、その年の大晦日にまだ入院している患者数、平均在院日数、があったとされている。これらの統計は、疾患別、性別、年齢階層別に取られていた。こうしたデータに基づいて、病院の衛生状態の改善、あるいは、ナースコールの創設をはじめ様々な改善提案が、病院の中に実装されていったのである。
  1874年のQuetletの死後、彼女は、彼の統計学を残すために、Oxford大学に応用統計学科を創設する活動を興す。このとき、Galtonに相談するのだが、Galtonは、OxfordやCambridgeにその種の学科を新設することについては、入試科目に統計がない状況では難しいと悲観的な意見を述べた。話はそれるが、現在、3項目中2項目を選択する高校の数学Bで、「確率・統計」は指導要領の筆頭項目なのであるが、(鹿児島大学を除く)全ての国立大学がそれを入試に出題していないから、という理由から、わが国の高校の確率・統計の履修率は1%以下なのである。Galtonからすれば、これでは日本に統計学科をつくることは難しい、と諦めるような状況であろう。ちなみに、1911年にOxford大学に、統計科学に関係する生物数学学科が設立されたのだが、Pearsonは、応用統計学科の方が良かったと考えていたようで、1924年のGaltonの伝記の中で、自分が資産家だったならば、Nightingaleを教授とする応用統計学科をそのとき創設したであろう、といった感想を述べている。Pearsonにしてみれば、彼の科学の文法に先立って、「看護学を実証科学にした」のがNightingaleだった、という思いもあったであろうことは容易に想像される。ちなみに、実際にOxford大学の生物統計学科が応用統計学科に改組されたのは、1988年になってのことであった。
  このように、Nightingaleの品質改善活動は、欧米ではデータに基づく先駆的改善活動であったと考えられているのだ。もちろん、彼女の活動の中でも多くのPDCAサイクルが回されたであろうことは容易に予想される。Pearsonは、NightingaleとGaltonの目的と方法とが一致していたことを、Galtonの伝記に記載している。
  丸山健夫著『ナイチンゲールは統計学者だった!-統計の人物と歴史の物語』(2008)が出版され、彼女の統計学に対する貢献、いやそれ以上に、統計を用いて様々な改善活動を行ったことが、わが国でも知られるようになった。Nightingaleは、(一社)日本統計学会が認定する「統計検定」のマスコットとして、Web Pageにも登場している。科学的活動に基づく医療改革・社会改善といった「コトつくり」は、横幹連合の得意とするところと信じるのだが、様々な先達の活動が参考になるのではないかと考える今日この頃である。

 COLUMN 2

第48回横幹技術フォーラム 「人工知能によるシステム構想力・統合力の強化 〜ものづくりプラス企業の実現に向かって〜」のご紹介

  採録・構成 武田博直(横幹ニュースレター編集室長、日本バーチャルリアリティ学会)

◆総合司会   舩橋誠壽(北陸先端科学技術大学院大学、横幹連合副会長)
◆開会あいさつ 桑原洋 (横幹技術協議会会長)
◆講演1 「人工知能技術の進展と今後の可能性」 麻生英樹(産業技術総合研究所、人工知能研究センター副センター長)
◆講演2 「人と相互理解できる次世代人工知能:生活・サービス分野への応用と社会実装の課題」 本村陽一(産業技術総合研究所、人工知能研究センター首席研究員)
◆パネル討論「システム構想立案・統合を強化する人工知能」
 討論者:上記講演者、山本里枝子(富士通研究所、システム技術研究所 所長)、加藤博光(日立製作所、システムイノベーションセンター部長) 司会:舩橋誠壽
◆閉会あいさつ 鈴木久敏(横幹連合会長)

日時: 2016年11月7日
会場:東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター東京(東京都港区)
主催:横幹技術協議会、横幹連合

プログラム詳細のページは こちら

  2016年11月7日、東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター東京において、第48回横幹技術フォーラム「人工知能によるシステム構想力・統合力の強化 ~ものづくりプラス企業の実現に向かって~」が開催された。
  人工知能(AI)研究においては、最近、「深層学習」(Deep Learning)という多層構造のニューラルネットワーク(ここでは説明を省略する)を用いた機械学習の手法が注目を集めているという。これは、トロント大学のジェフリー・ヒントンらが、2006年にSCIENCE誌に載せた記事「ニューラルネットワークによるデータの次元の削減」 が出発点だとされており、その後、米国 google社がヒントンらの協力で AI研究の子会社を設立して、ここでYouTubeの画像を大量に与えられた深層学習のアルゴリズムが 2012年に「猫」を自ら認識できるようになったこと、また、同社の AIが欧州の囲碁チャンピオンと 2015年10月に対局して、5戦全勝の成績を収めたこと、などから、「AIが人間に近いパフォーマンスを示した」として大きく注目されたのだという。また、google社が自動運転車を長く開発していたことからの連想で、AIが次世代車の障害物認識に応用されるだろうという大手自動車メーカの懸念も産業界に大きな動揺を与えた。
  本フォーラムでは、最初に、人工知能学会監修『深層学習 Deep Learning』(近代科学社刊、2015年)の著者の一人、麻生英樹氏(産業技術総合研究所、以下、産総研)が、最近の AI技術の進展と今後の可能性について講演した。氏によれば、1990年代までの人工知能研究は、アルゴリズム、オントロジー、知識(データ)ベースの開発が中心で、画像処置や音声認識、ニューラルネットワークなどは「AI研究ではありません」とされていたのだという。興味深い歴史である。ところが、従来主流であった知識駆動型の AIに対して、異なるアプローチによる「データ駆動型 AI」(統計的機械学習の手法で、数理モデルに観測可能変数を大量に与えて潜在変数を推測させるやりかた。深層学習はその一手法)が、コンピュータの高速化、クラウド/ビッグデータの活用などによって冒頭に挙げた顕著な成果を示したことから、産業界の注目を集めているという。ここでは、麻生氏から、統計的機械学習の原理、確率的モデリングの動向を含めた、幅広い研究領域全体のイメージが概説された。
  続いて、本村陽一氏(産総研)が、「人と相互理解できる次世代人工知能:生活・サービス分野への応用と社会実装の課題」と題して講演を行なった。氏は、産総研の製作したビデオを上映し、生活・サービス工学分野への AIの活用のためには、「個人の異質性」を意識した文脈依存・文化的問題を考察することや、「実世界データ」に基づく現象モデルを構築した「(異業種にまたがる)ビッグデータのプラットフォーム」が必要になることを指摘した。こうした方向への研究のために、氏は、実世界データから PLSA(確率的潜在意味解析法)という手法でデータの背後にある潜在的な要因を抽出し、情報の複雑さを(ぶどうの実を房で管理するように)いくつかの房に分けて潜在要因を整理する手法について解説した。こうして得た潜在クラスの現象モデルを、ベイジアンネットワーク(ここでの説明は省略する)という計算モデルで処理することで、確率的にどんなサービスが効果的であるかといった結論を推測できるのだという。こうして、例えば、カギを忘れたマンションの住人が、AI搭載の管理人ロボットに顔認証で玄関のカギを開けて貰ったのでお礼を述べる、といったやりとりが可能になるのだそうだ。
  続いてのパネル討論「システム構想立案・統合を強化する人工知能」の冒頭で、総合司会の舩橋誠壽氏は、システム論の教科書、Maier著『The Art of Systems Architecting』、Crawley著『System Architecture: Strategy and Product Development for Complex Systems』などを紹介しつつ、自身の考える製造業やサービス工学のシステム化の道筋について概説した。今後、企業内のノウハウを「学」の世界でも生かすためには「集合知」型の未来予測が必要で、設計仕様として、エキスパートと関与者が最初に価値創出についての「未来シナリオ」を描き、アーキテクチャを創出し、シナリオ分析、シナリオ評価を行なってシステムを完成させることになるだろうと示唆した。この時に、AIが、さまざまな局面での手助けとなり、こうした方法で(経産省も期待する)日本企業の「ものづくりプラス」化が達成できるのではないか、と氏は述べた。
  これに続くパネル討論では、登壇者の山本里枝子氏(富士通研究所)も、新しいシステム・アーキテクチャ構築のための前提(舩橋氏が述べた「未来シナリオ」)を、「5W1H」と表現して重要視した。なお、富士通では、プリント基板の最適な試作のために自社の 3Dパターンのデータベースから AIを用いていくつかの候補を選び取る、といった AIの使い方を検討しているという。また、もう一人のパネル登壇者、加藤博光氏の所属する日立製作所では、従来から、「顧客の近くに研究者を配置し、共創によって(生活者のシナリオに添った)プロトタイプを開発する」という手法で「ものづくりプラス」を実際に活用しており、その成功事例も数多いのだが、加藤氏は、新都市の設計といった分野での自律分散型(サブ)システムなどの構築に AIが応用できるのではないか、という問題意識を披露した。
  パネル討論では初めに、「データの著作権をクリアして、良質なビッグデータを異業種に亘って大規模に集めるためにはどうすれば良いか」という山本氏からの質問について議論された。パネラーからは、「データ」に関しての著作権は存在しないこと、そして、データの集合から派生する 2次的な利用権を、個別に管理者と交渉する必要があることなどが指摘された。特に、日本の「学」の世界でも、米国の Data Management Plan(研究資金の援助を受けた場合に、収集されたデータを共有するための詳細な情報を明記しておくこと)や、欧州のHORIZON 2020の行なっているデータに関する情報収集の枠組みなどを参考に、データの機械処理を日本でも可能にしようとする動きがあるそうだ。そして、もしその情報に「いつ誰がどこで」を特定する内容や企業のノウハウが含まれていることなどを理由に、その管理者が公開を渋っている場合には、何らかのインセンティブをオプションとして提示して交渉して、公開を促してみてはどうか、とする示唆も披露された。ちなみに、経産省はデータの取り扱いに関する方向付けとして、データの所在場所は整理して公開するが、利用契約は使いたい研究者が個別に管理者と交渉するという方法を考えていることなども紹介された。
  ところで、最初の麻生氏の講演直後の質疑に、会場から「AIが、なぜ、そうした結論を出したか、その理由は(必ず)分かるのですか」という質問が出された。麻生氏は、(知識駆動型の AIであれば原理的に可能なのだが)「深層学習では一般的には分かりません」と答えたが、「それでは(産業用や社会実装のためには)困るのですが」という指摘があった。このやりとりを受けて本村氏は、ビッグデータを予め(PLSAなどの手法で)加工して、確率モデリングによる現象モデルの蓄積された環境を適切な形で整理しておくことで、AIが推論した理由を特定できるのではないか、とする私案を述べた。氏はまた、次世代の AIは、与えられたデータが「現象として理解・予測・制御可能な形」に整理されており、その結論の利用者とは協創・相互理解ができるという前提において、人の意思決定を支援することが信頼して任せられるのではないか、と独自の見解を述べた。
  また、技術フォーラムの冒頭で、桑原洋 横幹技術協議会会長は、「学の世界が、AIを先に定式化して、その後に実用に供したいと考えているのは分かるが、産業界は、そこまでは待てない。聴講者は、AIで、自分の抱える問題がどう解決できるかについて意識しながら、今回の講演を聞いて頂きたい」と述べ、今後もこのテーマについての技術フォーラムを継続して開催したい、と語った。閉会の挨拶で、鈴木久敏 横幹連合会長は AIを構成する横断的な個々の学問に光をあてて行くことが横幹連合の役割であることを強調し、今回、非常に熱心に議論が行なわれたことの謝意を講演者に示して、多くの示唆に富んだ今回の講演を好評のうちに締めくくった。    

 EVENT

【これから開催されるイベント】

●日本統計学会 第11回日本統計学会春季集会
 日時:2017年3月5日(日) 会場:政策研究大学院大学(港区六本木)

●日本品質管理学会 H28年度 QMS-H研究会成果報告シンポジウム
 日時:2017年3月5日(日) 会場:早稲田大学西早稲田キャンパス

●日本応用数理学会 第13回 研究部会連合発表会
 日時:2017年3月6日(月)〜7日(火) 会場:電気通信大学

●日本信頼性学会 2016年度信頼性フォーラム
 日時:2017年3月9日(木) 会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル

●日本計算工学会 ウィンタースクール『トポロジー最適化の基礎』
 日時:2017年3月9日(木) 会場:中央大学理工学部 後楽園キャンパス

●精密工学会 2017年度春季大会学術講演会
 日時:2017年3月13日(月)〜15日(水) 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス

●日本オペレーションズ・リサーチ学会 2017年度春季大会学術講演会(創立60周年記念大会)
 日時:2017年3月15日(水)〜17日(金) 会場:沖縄県市町村自治会館

●応用統計学会 2017年年会・チュートリアルセミナー
 日時:2017年3月17日(金) 会場:中央大学 後楽園キャンパス

●日本品質管理学会 第6回科学技術教育フォーラム『科学技術立国を支える問題解決教育』
 一社会との共創による新教育課程の実現一(統計的問題解決の捉え方、考え方と育成方法)
 日時:2017年3月25日(土) 会場:電気通信大学

●日本感性工学会 第12回日本感性工学会春季大会
 日時:2017年3月29日(水)〜30日(木) 会場:上田安子服飾専門学校(大阪市北区)

●日本生体医工学会 第56回日本生体医工学会大会
 日時:2017年5月3日(水)〜5日(金) 会場:東北大学星陵キャンパス

●日本リモートセンシング学会 International Symposium on Remote Sensing 2017 (ISRS 201)
 日本リモートセンシング学会 第62回(平成29年度春季)学術講演会
 日時:2017年5月17日(水)〜19日(金) 会場:名古屋大学東山キャンパス

●可視化情報学会 The14th Asian Symposium on Visualization(ASV14)
 日時:May22-26, 2017 会場:Conference Center of Beihang University (BUAA), Beijing, China

●システム制御情報学会 第61回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI'17)
 日時:2017年5月23日(火)〜25日(木) 会場:京都テルサ

●日本経営工学会 2017年度春季大会
 日時:2017年5月26日(金)〜27日(土) 会場:龍谷大学深草キャンパス

●日本経営システム学会 第58回(2017年春季)全国研究発表大会
 日時:2017年5月27日(土)〜28日(日) 会場:東京経済大学 国分寺キャンパス

●日本品質管理学会 第113回研究発表会
 日時:2017年5月27日(土)〜28日(日) 会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル

●日本信頼性学会 第39回年次大会/第25回春季信頼性シンポジウム
 日時:2017年5月31日(水) 会場:日本科学技術連盟本部(東京都新宿区)

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