横幹連合ニュースレター
No.006, May 2006

<<目次>> 

■巻頭メッセージ■
「私の技術者人生と
 横断型科学技術」
江尻正員
横幹連合 副会長

■活動紹介■
【参加レポート】
第10回横幹技術フォーラム
第11回横幹技術フォーラム


■参加学会の横顔■
日本バイオフィードバック学会

■イベント紹介■
第1回横幹連合総合シンポジウム
第12回横幹技術フォーラム
イベント開催記録(2006.3〜5)

■ご意見・ご感想■
ニュースレター編集室
E-mail:

*  *  *

横幹連合ニュースレター
バックナンバー

横幹連合ニュースレター

No.006 June 2006

◆参加学会の横顔

毎回、横幹連合に加盟する学会をご紹介していくコーナーです。

日本バイオフィードバック学会

ホームページ:http://wwwsoc.nii.ac.jp/bf/

 会長  西村 千秋

 (東邦大学 医学部 医学情報学教室 教授)

 【工学と医学と心理学が出会うところ】

 私たちの心身は、外界からの刺激に反応して時々刻々変化します。外部に向けては、筋肉を動かしてそれに反応するとともに、内部では自律神経系や内分泌機能などを通じて体内環境を調節しています。ただ、それらの多くは無意識的に操作され、ごく一部しか意識にのぼりません。しかしそのような体内状態を適切な計測器によって測定し、その情報を画像や音の形で自らが意識できるように呈示することで、制御不可能と考えられていた身体の諸機能を、意識的に制御することが可能だと分かってきました。このように、工学的な手段で意識にのぼらない情報を意識上にフィードバックして体内の状態を意識的に調節できるようにする技術や現象を総称して、「バイオフィードバック」と呼んでいます。

 バイオフィードバックは、すでに多くの分野で応用され、まず、医療の方面で、気管支喘息、高血圧、不整脈、頭痛、てんかん、手足の冷え、過敏性腸症候群、円形脱毛症、 自律神経失調状態など種々の病態の治療やその予防に用いられています。また、日常の心身の状態を快適に保っておくための健康増進面にも有用で、さらに、競技を前にした運動選手の心身の管理や精神集中の役にも立っています。脳血管障害後のリハビリテ−ションや失禁予防にも有用であることから、間もなく日本が直面する高齢化社会における福祉面にも大きな期待が寄せられています。

 日本バイオフィードバック学会は30年以上の歴史をもち、毎年一回の総会と数回の講習会を開催するとともに、機関誌「バイオフィ−ドバック研究」を発刊しています。また、学会として「バイオフィードバック技能師」を認定しています。医師をはじめとする医療関係者、工学研究者や技術者、心理学者や心理療法実践家、スポーツ関係者、教育関係者など、多くの分野より幅広い人々が参加しているのが特徴です。
  この学会について、会長の西村千秋先生(東邦大学 医学部)に、お話を伺いました。

Q: マラソンランナーが使っている「高精度50g体重計」で自分の体重の微細な変化を意識すると、セルフコントロールが効果的に出来て、苦労せず楽しくダイエットできるという「バイオフィードバック」に関連した記事を見つけました(購入を考えています)が、一般の人たちとの接点は、このような製品であることが多いのでしょうか?
西村会長 例えば米国では、ストレス学説や精神分析療法の流行などから「意識下」への関心が高く、肉体と精神、フィジカルとメンタルのバランスを取るいろんな機器が出ていますね。ところが日本では「薬事法」で医療機器がきびしく管理されていることなどから、30年以上の歴史がある学会ですが、一般の人たちの耳には余りなじみがないのが実情です。 しかしながら、最近のチーム医療に心理系・工学系の専門家が参加することなどからも注目されており、今後は福祉・リハビリなどにも活躍の場が広がるだろうと予想しています。

Q: 学会員の皆さんの、ご研究の今後の方向というか、トレンド(傾向)があればお聞かせ下さい。
西村会長 研究されている分野は非常に幅広いですが、先の質問にもあったような、日常生活での健康維持やリラクゼーションのために工学的なフィードバックを与える個人向け機器の開発などは目立った分野です。バイオフィードバックの技法には、工学、医学、心理学の(横幹的な)基礎知識、そして、安全などに関する倫理意識が必要です。それで、将来を見越して「バイオフィードバック技能師」の認定を始めました。約300名の会員中、現在17名が、一定の学識と技能を修めた技能師と認定されています。 また、最近の「脳科学」の発展と相まって、バイオフィードバックの原理を理論と実測の両面から解明していこうという動きもあります。バイオフィードバックは意識と無意識にまたがる学習過程ですから、氷山に例えると海中に沈んで見えない「意識下」と、「意識上」との係わりについて、この技法を用いて研究していこう、ということです。

Q: 西村先生のご関心、今後の研究分野などについて、お聞かせ下さい。
西村会長 会長としては、全体の舵取りをしています。が、個人としては「数理工学」が出身ですので、情報処理機構から脳を科学するという、極めて横幹的な領域に関心がありますね。生体的な制御理論モデルをもとに脳内情報処理様式を予測し、脳波や脳磁気あるいはfMRIやPETで確かめるとか、体重や血圧を計測して行なうバイオフィードバック的なトレーニングでの「気付き」などの脳機能測定を通して、「意欲」や「情動」といった意識下とメンタルな意識上との接点を脳構造に立脚してモデル化する。そうしたステップが測定に掛かるようになると、理論的な裏付けを伴った形で、今まで以上に効果的なリハビリ用機器や福祉機器、健康増進機器などが開発できるのではないか、といった分野をこれからも研究して行きたいと考えています。