横幹連合ニュースレター
No.009, Apr. 2007

<<目次>> 

■巻頭メッセージ■
「会誌横幹の刊行」
横幹連合 理事
廣田 薫

■活動紹介■
【参加レポート】
●2007年度総会
●第14回横幹技術フォーラム

■参加学会の横顔■
●日本知能情報ファジィ学会
●日本人間工学会

■イベント紹介■
●第15回横幹技術フォーラム
●これまでのイベント開催記録

■ご意見・ご感想■
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横幹連合ニュースレター
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横幹連合ニュースレター

No.009 April 2007

◆活動紹介

 今回は、2つのイベントをご紹介します。
【速報】2007年度 定時総会・講演会・活動報告会(4月9日)
【参加レポート】第14回横幹技術フォーラム「通信とその関連技術の連携と展望」(2月21日)
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2007年度 定時総会・講演会・活動報告会

日時:2007年4月9日  会場:東京大学 山上会館(東京・本郷)
主催:横幹連合
 
1) 2007年度の定時総会が吉川弘之会長の司会で行われ、新任の役員、年度計画および予算が、満場一致で承認されました。
2007年度定時総会 配布資料 (PDF)
2)続いて、江尻正員副会長の司会で、活動報告会が行われました。
 ・第2回横幹連合コンファレンス「異分野をつなぐ知のシナジー」(開催予告)
                        ……… 実行委員長:椹木哲夫 氏
 ・横幹ロードマップ委員会         ……… 委員長:江尻正員 氏
 ・会誌「横幹」の創刊(会誌編集委員会)  ……… 委員長:原 辰次 氏
 ・学としての知の統合委員会        ……… 委員長:木村英紀 氏
 ・共生コミュニケーション支援調査研究会  ……… 主査:井越昌紀 氏
 ・開発・設計プロセス工学調査研究会     ……… 主査:林 利弘 氏
なお活動報告会に関連して、次の資料が配布されました。
 ・会誌「横幹」創刊号
 ・「共生コミュニケーション支援調査研究会」成果報告書
 ・知の統合ワークショップ「横断型科学技術と数学」開催報告
3)定時総会に先立って、特別講演が行われました。
 ・「ヒトとロボットと小説の未来」 …… 講師: 瀬名秀明 氏(SF作家、東北大学機械系特任教授)

【講演概要】平成19年度横幹連合通常総会特別講演
 「ヒトとロボットと小説の未来」  講師: 瀬名秀明氏(注1)

 『日本沈没』の小松左京氏のエッセイに「拝啓イワン・エフレーモフ様」(注2)がある。ここには、小松氏の(SF)文学感が凝縮されている。人間にとって科学やロボットとは何かを、別の側面から照射するテーマとして、小松氏の「人類にとって文学とは何か」という問題提起から話を始めたい。
 ロシアSF界の大御所イワン・エフレーモフは、「純粋なSFとは、科学的根拠に基づき、科学の成果を人間のための自然改造、社会改造、人間自身のために利用する事についての空想を描くもの」というSF感を述べたが、小松氏はこれを批判して、神話・伝承、古典・通俗などのすべての文学がSFの視点からは相互に等価とみなせるだけではなく、SFは科学的シミュレーションや歴史の相対化も取り込めると指摘した。それで、近著では「SFとは文学の中の文学である」「SFとは希望である」とも述べている。一般的に、科学的なシミュレーションが強くなりすぎるとバルザックが書いたかもしれない「宇宙喜劇」的な面白みが減る、といったSFの傾向も指摘できるが、小松氏の発言は傾聴に値する。
 ところで、小松氏の「拝啓イワン・エフレーモフ様」は、科学が「未来」と結びついて語られていた100年前の、H.G.ウェルズやバーナード・ショーなどの当事の知識人に対するG.K.チェスタトンの批判を想起させた。ブラウン神父シリーズ(注3)の作者G.K.チェスタトン(注4)は、科学で新世界の秩序を樹立するなどと言って実は「ほかの人びとを見くだしている」知識人(似非学者)に比べて、「信仰を持ち、家族を大切にして、ごく正統(ふつう)に暮らしている人」のほうが立派であると説いた。ロボット学の世界では、人間にとっての「ふつう」のことをロボットにさせるのが一番難しい。また、左利きの人が自動改札を通るとき苦労するように、標準の身体を持たない人間にはふつうの人間社会のデザインが差別であることも時にはあって、ヒューマノイド・ロボット(注5)の開発は、人間の身体性の「ふつう」とは何かを強く意識させる。
 チェスタトンは、ローマ・カトリックの信仰に即した生活を、正統(ふつう)であるとした。ロボット開発においても、単純に人間の能力を超えるロボットの開発を目指すのではなく、共存する人間がロボットによって人間の「ふつう」を意識させられ、人間固有のヒューマニティを自省する契機となるような、そんな時代が来るのではないだろうか。 (要約・文責:編集室)
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(注1)瀬名秀明:21世紀の総合科学たるロボット学に関して、『ロボット21世紀』(文春新書)や『岩波講座ロボット学1/ロボット学創成』(第5章、ロボット共存社会とヒューマニティ)など多数の執筆を行う。また、ロボット小説として『デカルトの密室』『第九の日』などを刊行。
(注2)「拝啓イワン・エフレーモフ様」:『小松左京コレクション1/文明論集』(ジャストシステム)に「未来の思想」「歴史と文明の旅」と併せて収録。『小松左京全集完全版/第28巻』にも収録。小松氏の文学感は、『SF魂』(新潮新書)などを参照。
(注3)ブラウン神父:世界の三大名探偵の一人。『ブラウン神父の童心』(1911年)など。
(注4)G.K.チェスタトン:英国の推理作家、批評家(1874-1936)。「チェスタトンの文章は文脈で成り立っているから、ごく一部を抜き出して提示するのがとても難しい」(瀬名)が、以下に抜粋を試みる。「狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である。」(福田ほか訳『正統とは何か』)「どんな逆境にあってもご主人を盛り立てようとする奥さんがたも、ご主人との個人的な関係においては、相手の弱点は実はことごとく恐ろしいほど見透しているのである。これが男の友人なら、美点も弱点もそのままにして好きなのだ。ところが、奥さんの場合にはご主人を愛していて、だからこそいつもご主人を誰かほかの人間に変えてしまおうと懸命なのである。」(福田ほか訳『正統とは何か』)「家族という制度は、アナーキーなものであると言えるかもしれない。それがどんな法秩序より古く、国家の権力の外にあるという意味においてである。(略)家庭の喜び・悲しみといった最もありふれた場合には、国はどんな方法をもってしても入り込むことはできない。家庭に法が入り込むべきでないと言うよりは、法はそもそも入ることができないのである。」(上杉訳『正気と狂気の間』)など。
(注5)ヒューマノイド・ロボット:人間の形をしたロボット。「ロボットは宇宙、海底、原子力施設などのいわゆる極限環境で作業をするために研究されているところがある。ロボットというと、どうしてもそんなところに目が行ってしまうが、普通の動作が基本にある。例えば、PBDRはダンスであり、HRP-2は太鼓とか棒術である。人間だと普通にできる動作の解明が、実は極限に迫ることに繋がる。そこがロボット研究の非常にエッジがきいているところに思える。」(東北大学工学部機械系HP「瀬名秀明がゆく!」シリーズ1「青葉山でロボットを語ろう」一部を要約)
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第14回横幹技術フォーラム

テーマ:「通信とその関連技術の連携と展望〜ビジネスのキーインフラとしての通信を活かすために〜」
日時:2007年2月21日  会場:キャンパス・イノベーションセンター(東京・田町)
主催:横幹技術協議会、横幹連合
プログラム詳細のページはこちら

【参加レポート】
本間 弘一氏 (日立システム開発研究所、 電気通信大学 客員教授、計測自動制御学会)

「通信とその関連技術の連携と展望 〜ビジネスのキーインフラとしての通信を 活かすために〜」と題して、第14回目の横幹技術フォーラムがキャンパス・ イノベーションセンター(東京都港区)で開かれた。これに参加したので、報告する。
 
 はじめに、横幹技術協議会会長 桑原 洋氏より、「わが国産業の進路とイノベーション」と題して基調講演が行われた。
 イノベーションは、経済産業省の「新経済成長戦略」にも述べられているように日本の将来のために必須ではある。既存のテクノロジーをドライブさせることが、日本発のオリジナルな製品や事業の創出に つながることもあるが、次の時代(社会)を予想し、将来のその社会が必要とする技術を発想してドライブすることも考えている。「安心・安全」に続く、新しい国家レベルのテーマを策定しつつある。
 一方、このようなイノベーションを支えるためには、経営にも革新が求められている。
従来の直感型に代わる経営としては、何に限らずシミュレーションをするということではなく、経営するうえでわかっていること(定量的分析が可能)、半分わかっていること(仮説設定が必要)、最適な判断がわからない場合(自分で判断しな ければいけない)を分けて考えることが重要であるという。我が意を得た結論であった。
 
 続いて、日産自動車技術開発本部主管の福島正夫氏より、「通信技術を活用した交通安全と渋滞緩和対策 〜日産自動車の取り組み〜」という講演があった。
 日本では、死亡事故(平成18年は6千人台)は減少を続けているが、人身事故については高止まりのままである。渋滞による経済損失は年間12兆円にものぼり、渋滞で11%もの燃料が無駄に消費されているという。これを、車車間通信、路車間通信によって解決する方法が論じられた。
 現在、有効性の検証から普及のプロセスに移るフェーズとのことであるが、確かに出会い頭の事故や、右折時の対向直進車との衝突など、見えない相手との事故防止に有効であるように思われた。
 また、渋滞緩和には、実際に走行中の自動車から速度や位置のリアルタイムのきめの細かい交通情報を収集する「プローブカー」という試みもなされている。普及の卵鶏問題を超えて、これらのシステムがぜひ有効となるように願っている。
 
 グーグル社のソフトウェアエンジニア 工藤 拓氏からは、「Googleを支える大規模分散システム」という講演が行われた。世界中の情報に簡単にアクセスでき、社会現象にもなっている「Google」の急成長を支える情報システム基盤が、どのようなもので、どう成長しているかは、会場にいる全員の興味を引いた。
 現在のシステムを支えているのは、数万台のカスタマイズされたPCサーバー(2CPU、2〜4GBメモリ、ギガビットイーサネット、リナックスOS、ハードディスク)、 独自開発の運用管理ツール、拡張可能な分散ストレージデータベース(Bigtableと呼ばれる3次元テーブル(URL軸×コンテンツ軸×時間軸))などであるという。
 97年のサービス開始以来、ユーザの増大、検索対象データの増大、検索の質向上に対応して、手作りのシステムからデータセンタをまたぐ大規模な分散システムに成長してきた。当初のシステムでは、ハードディスクの故障時の交換を容易にするためネジ止めしないでガムテープで止めていたなど、おもしろい内幕話も聞く ことができた。システム規模の増大で、最近は電力コスト、ネットワークコストが顕在化し、対策が課題になっているという。
 
 最後に、ドコモ・テクノロジ知的財産部長の鶴原稔也氏から、「標準化・知的財産と通信」と題して、通信技術を中心に、標準規格化と知的財産についての講演が行われた。
 最近の標準化必須特許の取り扱いについては、これまでの無償での提供から、何らかの方法での非差別的なロイヤリティ請求の方向にあるという(移動体通信標準規格GSM、IMT-2000など)。許諾体制としては、煩雑さやコスト増を回避するため、パテントプール(MPEG-2など)、代理人による一括許諾(DVDなど)、パテントプラットフォーム(IMT-2000など)が工夫されてきている。
 また、米国での裁判事例では、標準規格が普及した後の権利主張について、規格策定参画中に開示しなかった場合には権利行使が認められない。標準規格として提案しても、不採用だった場合には権利行使ができる、といった判断がでており、また標準化に関連した知的財産権には今後も明確にするべき課題がいくつも残っているとのこと。従って、研究開発サイドも、こうした標準化必須特許の有償化の傾向の中では、許諾の仕組み、権利主張の裁判事例などを視野に入れつつ、開発および権利化を進めなければならないということになるだろう。
 
 以上のように、通信と関連技術の連携について、最近の動向をさまざまな側面から知ることができ、大変興味深かった。

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