横幹連合ニュースレター
No.010, Jul. 2007

<<目次>> 

■巻頭メッセージ■
タイトル
椹木哲夫 横幹連合理事
京都大学

■活動紹介■
【参加レポート】
●第15回横幹技術フォーラム

■参加学会の横顔■
●日本時計学会
●プロジェクトマネジメント学会

■イベント紹介■
●第16回横幹技術フォーラム
●これまでのイベント開催記録

■ご意見・ご感想■
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横幹連合ニュースレター

No.010 July 2007

◆活動紹介


【参加レポート】第15回横幹技術フォーラム「ビジネスプロセスを科学する〜可視化・モデル化・最適化」(5月15日)
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第15回横幹技術フォーラム

テーマ:「ビジネスプロセスを科学する〜可視化・モデル化・最適化」
日時:2007年5月15日  会場:東京大学 山上会館 大会議室(東京・本郷)
主催:横幹技術協議会、横幹連合
プログラム詳細のページはこちら

【参加レポート】
岩崎 真明氏 (日立マクセル株式会社 IT推進本部企画推進部長)

5月15日、第15回横幹技術フォーラムに参加したので報告します。
業務のため、残念ながら後半からの参加となりました。技術フォーラムでは、日常の仕事とは離れた話題に触れることができて、刺激になっています。内容が難しいことも時々ありますが、すべての講演に共通して感じることは、講師の方々の熱意です。仕事にかける情熱、探究心、諦めることのない継続力を肌で感じることができ、私も「もっとがんばろう」という気持ちを新たにすることができます。

 さて、白井宏明先生(横浜国立大学)の講演「経営と情報のギャップを埋めるユーザ参加型モデリング」では、ITシステムを求める人(経営層)とシステムを設計開発する人の双方が感じている不満を、「ビジネスゲーム」を用いて解消する方法とその効果について紹介されました。これは、その人たちの間に共通の言語がないことから開発の要件定義の段階で大きなギャップの生じることが多く、結果として開発されたシステムに双方が不満を感じるためです。これを「ビジネスプロセス」における問題点ととらえ、そのギャップを可視化するために、ビジネスゲームが活用できるそうです。

 経営学の分野におけるゲーミングメソッドの代表例であるビジネスゲームは、もともとは軍事訓練用のウォーゲームに端を発し、企業経営者の教育ツールとして欧米で発達して、日本においても多くの大学や民間教育機関で採用されているようです。具体的には、あるITシステムの開発に際して要件定義を作り始める前に、経営層とシステム開発の人たちが新しいオフィス環境を創造するための「ビジネスゲーム」を一緒に開発し、Do-it-yourselfのビジネスゲーム・ジェネレータを使って、全員が意見交換をしながら改良されたビジネスプロセスをモデリングしてゆくというものです。「ゲームだから、参加しやすい」「議論が、発散しにくい」「言葉が一致するので、合意が形成しやすい」などの効果があって、広い視野からの改善案が検討できるとのことです。横浜国立大学ビジネスゲーム(YBG)の頁( http://ybg.ac.jp/ )のログイン画面には、数多くの大学で実際に使われている改良されたビジネスゲームのメニューが並んでいます。

個人的なことになりますが、私は日立マクセルに87年に入社しました。マクセルのビジネス基盤が出来上がった後での入社です。私の関心を引いたのは、このビジネスゲームの仕組みは、企業の中で先輩社員(例えば、マクセルを築いてきた、いわゆる団塊世代の方々)の経営体験などを若手に伝え、企業文化やDNAを継承するための仕組みとして活用できるのではないかという点でした。経営のように複雑な要因が絡み合った事象を学習するためには、個別の理論/手法といった講義も大切ですが、それをよりリアルに、疑似体験のできるような仕組みが必要だと思います。ビジネスゲームは、擬似的な体験を通して得られた知識を確かめながら身につけていく、つまり、知識を知恵に変換するための仕組みとして、期待できるのではないかと思いました。

今は、新たに、新世紀に向けた新しいビジネス基盤「未踏への挑戦」を作り上げていく「時」にめぐり合っており、企業が築き上げてきた基盤、つまり技術力、文化、ブランドなどのDNAを活かした新たなビジネス基盤を確立するためにも、ビジネスゲームは活用できます。もし日立グループ、マクセルグループのOBの方々にご協力頂くことができれば、先輩社員/OB社員と若手のFace to Faceのコミュニケーションによって、日立グループ全体の相当なノウハウを擬似的に体験できる/学べる機会の可能性が、ビジネスゲームには秘められているように感じました。

最後の平井愛山先生(千葉県立東金病院院長)の講演「医師不足自治体の地域医療のあり方 -人材育成と医療連携が新たなビジネスモデルに-」では、平成16年度の新医師臨床研修制度のもたらした全国レベルでの深刻な「医療崩壊」の実態が紹介され、適切なモデルによってこれを回避することができなければ、一般の人たちの今後は悲惨なものになるとの指摘がされました。この傾向は、特に過疎地や都市近郊のベッドタウンなどで顕著に見られるようです。問題は、豊富な症例の経験ができる市中の病院を、研修医が自らの意思で卒業研修の場所として選べるようになったことに端を発します。つまり、これまでのように教授の強い指導によって大学病院で研修する、ということが少なくなったことから、研修医の偏在が生じ、大学病院の医師不足が顕著になってきました。その結果、これまでは大学病院の医局からの医師派遣によって勤務医を確保していた地方病院から多くの医師が大学病院に戻され、地方病院では極端な医師不足が生じているのです。
その解決のためには、地方の個々の病院が研修医や若手の医師から選ばれるような工夫(給料の優遇などは余り効果がなく、魅力的な指導が受けられること)が根本的には必要で、東金病院ではそれをビジネスモデルとすることで常勤医を確保することができたとのことでした。しかし、全国的にはこの問題は、かなり深刻で、救急対応を取りやめた病院なども数多いとのことです。私の姪が、今年から大学の医学部に進学しておりますので、今回の講演内容を伝えてみようと思いました。

時々思うのは、近所のかかりつけの開業医のもとにある私自身の医療カルテが、医療ネットワークみたいなもので、さらなる専門医と情報共有できればすばらしいと思うのですが、なかなかいろいろな諸事情があるらしく、難しいそうです。医療の分野は、IT的なインフラ以上に、やはり制度、医者の意識の改革のほうが難しいのではと感じました。


♯編集室より:
 これまでは経験と勘に頼っていたサービス産業に関して、サービスサイエンスが、近年著しく進展してきた。第15回フォーラムの前半では、その工学的方法論と実践的なソフトツールが紹介されている。
サービス産業は、GDP比や就業者数でも、いまや日本経済の3分の2を占め、大変重要であるが、その無形性、同時性、異質性、消滅性のゆえに分析が極めてむつかしい。これをふまえて、新井民夫先生(東京大学)から「サービス工学」の手法が紹介された。ここではサービスの全体像は、「供給者から受給者に受け渡されるサービスセット(モノとコトを含む)」と表現されている。
具体的には、サービス・デザインの収集分析や実現構造の合成に並行して、サービスの受け手の満足度が解析評価される。サービスが提供される際の具体的なプロセスは、BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)やPetriNet 、場面遷移ネットなどのプロセスモデルとして表現されている。関心のある方は、Webサイトの検索などでこれらのモデルのイメージを掴んでみられては、いかがだろうか。こうした工学的な手法による事例収集が増えれば、サービスプロセスを動的にシミュレートすることも可能になるだろう。
「サービスセット」は、顧客に対するマルチエージェント・システムとして表現されており、サービス設計支援システム(サービスCAD)の新Service Explorer ξ(Xi)も、既に40MB約30万行のシステムとして試験運用中(サービス工学研究会SEFORUMにて限定公開中)であるそうだ。
次に講演された中谷多哉子氏(筑波大学)は、ソフトウェア工学におけるUML(Unified Modeling Language)という統一化モデリング言語、そしてゴール指向分析を用いて、サービスを含むビジネスプロセスをアウトソーシング化する手法を具体的に紹介された。こうしたアウトソーシング手法を、例えば、顧客管理ソフトとして運用すれば、「効果的に顧客を囲い込む」というビジネスゴールが達成できるはずだ。ご自身がSEとして、顧客の要求をモデルに表現することにご苦労された経験から、講演は大変具体的で、本講演では「あるダイビングショップで、若年の顧客が年齢とともにリゾートダイバーになって減少してゆくことをくいとめるため、(ゴールを)シニア家族の対策に着目して、顧客へのサービス提供と囲い込みに努める」という例を挙げて、ビジネスプロセスの分析が紹介された。

事情により本文に収録できなかったため、補追しました。
(文責:編集室)

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