横幹連合ニュースレター
No.012, Jan. 2008

<<目次>> 

■巻頭メッセージ■
横幹連合に期待するもの
〜横幹科学技術の深掘りと見える化を〜
柘植綾夫 横幹技術協議会副会長
芝浦工業大学

■活動紹介■
【参加レポート】
●第2回横幹連合コンファレンス
●横幹ロードマップ委員会
WG3合宿

■参加学会の横顔■
●日本感性工学会
●可視化情報学会

■イベント紹介■
●国際計算機統計学会
第4回世界大会・第6回アジア大会国際合同会議
●これまでのイベント開催記録

■ご意見・ご感想■
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横幹連合ニュースレター
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横幹連合ニュースレター

No.012 Jan 2008

◆活動紹介

 今回は、2つのイベントをご紹介します。

【参加レポート】  第2回横幹連合コンファレンス
    「異分野をつなぐ知のシナジー」(11月29日, 30日)

【参加レポート】  横幹連合ロードマップ委員会WG3合宿
    「ヒューマンインタフェースの革新による新社会の創生」(10月19日, 20日)
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第2回横幹連合コンファレンス

テーマ:「異分野をつなぐ知のシナジー」
日時:2007年11月29日, 30日  
会場:京都大学 百周年時計台記念館(京都)
主催:横幹連合
後援:21世紀COEプログラム「動的機能機械システムの数理モデルと設計論」(京都大学)
   横断型基幹科学技術推進協議会
   (財)関西エネルギー・リサイクル科学研究振興財団
   (財)カシオ科学振興財団
幹事学会:ヒューマンインタフェース学会
プログラム詳細のページはこちら

【参加レポート-1】
領家美奈氏(筑波大学)

 第2回横幹連合コンファレンスが、京都大学百周年時計台記念館にて、2007年11月29日と30日に開催された。これに先立って同年2月15日に、プログラム委員長の椿先生から多くの関係者に、「横幹コンファレンスプログラム委員会へのご協力依頼」というメールが発送されている。筆者も、このメールに応えてプログラム委員を務めさせて頂くことになった。また幾人かの方々には、第2回横幹連合コンファレンスの宣伝とともに、プログラム委員長が初期に構想されたセッション構成案に基づき、「様々な知の様式の融合」と「認知科学・情報科学・統計科学・ナレッジマネジメントの方法論」について、発表のお誘いを申し上げた。快諾を頂いた発表を中心に、2日間会場を廻って聴講したので、その様子を紹介させて頂きたい。

 「様々な知の様式の融合」と「認知科学・情報科学・統計科学・ナレッジマネジメントの方法論」に関わる発表は件数が多く、発表セッションは1日目の午前から2日目の午後までほぼ連続して、異なる部屋で行われた。初めは1日目午前の第V室のセッションである。できるだけ異分野の方々が集まって議論ができるように仕組まれているのか、あるいは異なる視点をあえて際立たせるようにまとめられているのか、ひとつのセッションの中に並ぶタイトルは多岐にわたっていた。例えば、このセッションでは、「Karl Pearsonの『科学の文法』と漱石への影響」、「アナロジーゲームの動作履歴による概念生成プロセスの可視化」、「組織的知識創造プロセスの解明のための質的研究手法」、「連鎖倒産構造のチャンス発見手法による把握」、「マーケティング分野におけるデータ分析の進展」、そして「自己組織化マップによる学習型PDCA及びCAPDサイクルの分析」といった具合である。まるで、様々な様式の“データ”を捉えなおして分析せよと言われているようで興味深い。紅葉の美しい時期のため京都のホテルの予約が大変取りにくい状況で、また朝一番のセッションだったにも関わらず、聴講者は多かったように思う。そして、それぞれの発表に対してとても活発な質疑応答がなされた。これは、発表時間20分、質疑応答5分、さらにセッション全体の討論時間も確保されているという、余裕のある時間配分になっていたためでもあるだろう。

 午後は、第IV室で「様々な知の様式の融合」セッションが行われた。2日目は、午前と午後ともに第IV室で、それらに関連するセッションが行われた。

 筆者は、2日目午前のセッション「システム工学とナレッジマネジメントの融合」で前半の司会と、そして午後の「横幹研究開発(4)」という最後のセッションの後半の司会を、第V室でさせて頂いた。プログラム委員として携わるセッションが続けてあったので、あまり他のセッションの部屋へ行くことが出来なかったのが残念であったが、この2日間は、紅葉の美しい外の景色を横目で見ながら、いろいろと勉強させて頂いた。

 筆者は横幹連合コンファレンスには初めて参加したのだが、講演者・聴講者・オーガナイザーのそれぞれに、単一の学術分野を扱う従来の学会とは異なる、独特の作法があるように感じられた。発表者は大概、聴き手がどのような人か考えながら話を進めると思われるが、横幹連合コンファレンスでは幅広い分野の聴講者の前で発表を行うという難しさがある。自分の想定した範囲外の質問を受ける可能性も高い。逆に、様々なバックグラウンドを持つ方々が集まることを活用し、自分が抱えている問題について、異なった考え方やアプローチを広く聴衆に問いかけるスタイルをとった発表も見られた。また、聴講者も自分の専門分野以外の発表について、好奇心を持って聴きに行くことを促されているようであった。事実、筆者が本コンファレンスで聴講した自分の専門分野以外の講演の中に、大変興味深く感じられるものが多かった。また講演内容が充実していると感じられ、同様の指摘は講演会場のあちらこちらで聞くことができた。一般的に、自分が所属していない学会ではどのようなことが行われているのか、他学会の活動を知る機会はあまりないだろう。本コンファレンスのような機会を、上手く利用したいところである。

以上    

【参加レポート-2】
木村昌臣氏(芝浦工業大学)

 11月29、30日、第2回の横幹連合コンファレンスが実施された。筆者は、会場の京都大学には研究会などで何度か足を運んだことがあるものの百周年時計台記念館は初めてであり、新鮮な気持ちで初日から参加した。いくつかのセッションに参加したが、筆者の発表を含むセッション「医薬品インタフェース」および特に興味深く聴講した「システム工学とナレッジマネジメントの融合」、「定量的リスク科学を目指して」というセッションについて報告したい。筆者は研究として、医薬品の使用安全性に係るデータベースの構築やデータ分析を行っているので、「安全性」や「インシデント」(後述)というキーワードでセッションを選択して、それらのセッションに参加することにした。なお、「医薬品インタフェース」以外のセッションは共に二日目の午前中に重なって実施されたために、前者を途中から抜け出して後者に参加したことをお断りしておきたい。

 まず、「医薬品インタフェース」のセッションでは、4つの講演が行われた。それぞれの要旨は以下の通りである。

29C01: 医薬品に関して、例えば名称が類似していることから起きる医療事故の解決策として、名前が似ている医薬品のデータベースを構築した事例の紹介を含む、医薬品事故防止策と課題について
29C02: 薬剤師を対象とした、医薬品のe-learningシステムを作成する際に必要な情報を、医薬品の添付文書情報から取得する際に生じる問題点について
29C03: 女性高齢者に多く利用される骨粗鬆症用薬として、週1回飲めばよい薬が上市されたが、その薬の包装のブリスターカード(従来から薬に使われているPTPシートを台紙に挟んで一体化させた「パッケージ付きPTP」製剤)に対する、視線追跡等を利用したデザイン評価について
29C04: 医薬品を正しく利用する「使用の安全性」を担保するために、医薬品についてのあるべき使い方を示す医薬品添付文書情報と、誤って利用されてしまったインシデント(大きな事故の背後に隠れ、その引き金ともなる小規模のミス)についての情報を併せて提示するデータベースの提案について

 最後の発表が筆者のものであるが、そこでは、医療関係の複数のデータベースを関連づけて検索することを実現するために考慮すべき点についての質問をいただいた。このようなコミュニケーションが発生し、異なる専門家同士で意見のやりとりができることは、このコンファレンスの醍醐味といえよう。しかしながら、初日の午前中のセッションということで残念ながら発表者以外の参加者はセッション開始しばらくしてから徐々に集まるという状況であった。これは開会式の様子をみてもこのセッションだけの問題ではないと思われる。初日のとりわけ午前中は移動の関係から最初からは参加しにくい等の理由があるのは想像に難くない。二日目は予定よりも開始を遅らせて実施されたとのことだが、初日からそのようなことを考慮してプログラムを組んでいただければ、よりバラエティに富んだ専門家の方々と意見交換ができたのではないかと思い、少し残念な気がした。

 次に、「システム工学とナレッジマネジメントの融合」では、それぞれ以下の発表を聴講することができた。(セッションの前半部分を聴講した。)

30D01: システム開発の着手時の要件定義の段階で、必要なシナリオを実現するコンセプトが通常の設計会議ではなかなか獲得できず(会議時間の9割が無駄だという研究結果もある)、ごくまれに議論が単なる解決策の提示に留まらず継続された場合にだけコンセプト形成に至っているという現状に対して、服属アーキテクチャという質問ベースの手法を導入して可視的に効率良く設計コンセプトを形成できる手法についての提案
30D02: 表面に現れてこない犯罪組織の首謀者などの重要人物を見つける問題(但し人間関係などは表現可能な組織であるとする)を、複雑ネットワークにおけるノード発見問題と位置づけて、観測に掛からない見えない重要人物を発見する手法の提案
30D03: 似たような事故や失敗がたびたび繰りかえされている原子力発電所において、過去のトラブルや失敗事例を情報共有できるデータベースを構築し、そのデータベースに対する所員の「愛着」を喚起することによって発電所を「学習する組織」へと変革、熟成させるための研究

 何れの発表も知の活用をシステム的に行う点では共通しているが、個々の発表は取り扱う対象も異なりアプローチも認知工学から数理科学にわたる幅広いものであった。

 続いて、「定量的リスク科学を目指して」のセッションにおいて、以下の2つの発表を聞くことができた。(セッションの後半部分を聴講した。)

30E04: 企業の過去の会計決算データと次期の(一株当たり経常)収益の増減情報をデータセットとして用意し、データマイニング手法を適用して精度の高い企業収益予測モデルを構築する試み
30E05: 例えば原子力分野のような重大な事故の可能性のある複雑なシステムにおいて、インシデントの背景や原因が重大事故のそれとほぼ同一であることに注目して、インシデントレポートに記述されている内容をm-SHELモデル(従来のソフト、ハード、環境、人に加え、マネジメント項目を追加した人的要因分析モデル)に自動的に当てはめ整理して、事故原因を分析するオントロジー・システム(概念や因果関係を図示できる)の構築

 筆者が聴講したこれら二つのセッションとも、たった一つのセッション内でこれだけの幅広い分野を横並びに見ることができる機会はなかなか得難く、横幹連合の持つ「知の活用の横断的威力」をまざまざと感じさせられた気がする。また、普段、参加する学会が異なるなどの理由でお会いする機会がないそれぞれの分野の著名な先生に、異なる分野の研究者という立場で質問・議論できる機会もこのコンファレンスならではないだろうか。その意味ではいくつもの学会を掛け持ちしているのと同じ(コストパフォーマンスの観点からはそれ以上の)効果を得られたと考えている。

 全体として他分野に足を踏み込んでいる気後れからか聴衆者側からの質問が少なかったことが残念であった。また、分野によるカルチャーの違いからか参加者からの質問が自明な質問と捉えられてしまったこともあるようである。これらの問題は、コミュニティ内外で「常識」が共有されていないことに起因しているのではないだろうか。それ故、そのコミュニティの「常識」を探るうちにセッションが終わってしまう、またコミュニティによって自明な事項が何故自明ではないものとして捉えられるのかわからないなどの事態が発生してしまうのではないだろうか。異分野でのコミュニケーションを促進するためにもそれぞれのコミュニティで積極的に「常識」を共有していく仕組みが必要であると思われる。

 兎にも角にも個別・単独のテーマからは辿り着き難いトピックスに対する気づきが与えられたことは、筆者にとって大きな収穫であった。

以上   

横幹連合ロードマップ委員会WG3合宿

テーマ: 「ヒューマンインタフェースの革新による新社会の創生」
日時: 2007年10月19日, 20日
会場: 日産自動車マネジメント・インスティテュート(神奈川県箱根町)



【参加レポート】
橋山智訓氏 (電気通信大学大学院情報システム学研究科准教授、日本知能情報ファジィ学会)

 10月19日と20日に、日産自動車マネジメント・インスティテュート(箱根仙石原)において学会横断型アカデミック・ロードマップ作成検討WG3:ヒューマンインタフェース分野の集中検討合宿が開催され、参加したので報告する。

 かつてのリゾートホテルという非常にのどかな雰囲気の中でWG3の会合は開催されたが、外の雰囲気とは異なり、参加委員の皆さんはご自身の担当分野だけではなく、すべての話題に対して熱く議論をされた。ロードマップ作成のスケジュールは既に決まっているため、本検討会はその完成に向けてある程度の収束を試みる場であったが、議論が議論を呼び発散する場面も多く見られた。一参加者としては、ヒューマンインタフェースに関する様々な分野の情報を得ることができ、大変勉強になり興味深かったが、まとめ役としての主査である椹木(さわらぎ)哲夫先生のご苦労を思うと、複雑な心境である。

 会議で報告された話題から二点ほどを選んで、個人的な主観に基づきレポートを書かせて頂く。かなり偏りのある報告となることを、ご容赦頂きたい。

○理解から納得へ

 仲谷善雄先生(立命館大学)より、減災とヒューマンインタフェースの関わりについて話題提供を頂いた。減災とは「災害時において発生し得る被害を、可能な限り低減すること」であり、阪神淡路大震災を機に生まれた概念である。従来の防災は被害を出さないという観点からの概念で、減災はそこからの方向転換として唱えられたのだそうだ。興味深かったのは、台風や地震、津波などで避難命令が発令されても、それに従う人は一般的に20%程度であるという事実である。避難命令を聞いていないという人もいるだろうが、聞いているにも関わらず実行に移さない人がこれほど多いとは驚きであった。このように、頭では理解しているが実行が伴わない、すなわち「納得していない」というギャップを埋める工夫の必要性は、委員内でも認識が一致した。

 身をもって「実感」できるインタフェースが必要だということで、竹村治雄先生(大阪大学)からは、「バーチャルリアリティはその一助となりうる」という指摘があった。武田博直氏(セガ)からも博物館等での実例を挙げて、知識としてだけではなく、実感できる(臨場感がある)バーチャルリアリティについての説明があった。

○良いインタフェースは人間の学習能力を阻害する場合もある

 ところで、森本一成先生(京都工芸繊維大学)は、感性研究の立場からモノづくり技術に関する感性の伝承の例をあげ、徒弟制度はあながち悪い例ではないと主張された。また、西陣ビジネスモデルの概略についても紹介された。個人的な主観に基づく解釈だが、インタフェースを工夫して技術伝承を行いやすくすることも大事だが、同時に人間の可能性のすごさを再認識もするべきなのだと理解させられ、また納得もした。

 長嶋祐二先生(工学院大学)からは、ハンディキャップ支援におけるインタフェースの役割について話題提供を頂いた。インタフェースを作る側は「補う」あるいは「代替する」ことを考えようとするが、人間の側は逆にそれに頼ることになってしまう。そして、それがないと生活できなくなることは問題だ、という論旨は良く理解できた。

 これらの議論から、委員の方々が、生身の人間を強く意識していることが感じられた。このように率直で深い議論ができたのは、事前に椹木先生から「光ばかりではなく影の部分も考えて欲しい」という指摘があったことも大きいと思う。インタフェースは人と機械の間の技術として考えられているが、本来は人と人との間に機械を挟んで成りたつものなのだろう。

 今回のWG3での議論を私の言葉で要約させて頂くと、使いやすいインタフェースは様々に工夫され実用化されるだろうが、使う人間の側も感性を磨いて、自分なりの情報獲得ができたり、インタフェースをどう改善するべきかの提言ができるようになるなど、「人間の側も、(そればかり頼らずに)もっとがんばれ」という、ある意味、ヒューマンインタフェースの研究ばかりを重視しない方向に落ち着いた感もある。しかしそれは同時に、ロードマップが単なるキーワードの羅列にならないことが期待される内容でもあった。

以上   


【編集室注】橋山先生が参加された合宿での議論を含め、この前と後とに行われたWG3の会議の議論もふまえた報告書が作成されつつある。本稿では、WG3合宿時の議論の内容についてご紹介頂いた。総てのWGのアカデミック・ロードマップの策定作業は、横幹連合のWeb頁各所に随時、掲載されているのでご参照頂きたい。(トップ頁の「イベント・行事案内」など。最終的には、「資料」の頁に掲載、保存される。)

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