< CONTENTS >

■TOPIC

■COLUMN

■EVENT

< ARCHIVES >

■参加学会の横顔
掲載ページ

■横幹技術フォーラム
掲載ページ

■横幹連合ニュースレター
バックナンバー



■ご意見・ご感想■
ニュースレター編集室
E-mail:

*  *  *

【協力】
横幹連合 広報・出版委員会
    *  *  *
■横幹連合
 ニュースレター編集室■
武田 博直室長(VRコンサルタント、日本バーチャルリアリティ学会)
小山 慎哉副室長(函館工業高等専門学校、日本バーチャルリアリティ学会)
高橋 正人委員(情報通信研究機構、計測自動制御学会)
■ウェブ頁レイアウト■
山口 俊太郎委員(豊橋技術科学大学)

横幹連合ニュースレター

No.052 February 2018

 TOPICS

  1)会誌「横幹」の最新号(第11巻第2号、2017年10月15日発行)は、こちら をご参照ください。

  2)「システム・イノベーション」シンポジウム - スマートな社会と産業を目指した「システム・イノベーション」の実現に向けて ‐ が、11月7日、東京大学、武田先端知ビル、武田ホールで開催されました。活動報告は、こちら
 経済産業省の製造技術実態調査に協力した「第4次産業革命とシステム化研究会」の活動報告書は、こちらをご覧ください。

  3)第50回横幹技術フォーラム「未来洞察(Foresight)活動の取り組みの現状とその活用 ‐科学技術融合時代の先取りを目指して‐」が行なわれました。
  下のColumnをご覧下さい。

 COLUMN

第50回横幹技術フォーラム 「未来洞察(Foresight)活動の取り組みの現状とその活用 ‐科学技術融合時代の先取りを目指して‐」のご紹介

  採録・構成 武田博直 (横幹ニュースレター編集室長、日本バーチャルリアリティ学会)

◆開会あいさつ 桑原洋(横幹技術協議会 会長)
◆総合司会・趣旨説明 「未来洞察(Foresight)活動の取り組み」
鷲田祐一 (一橋大学 大学院商学研究科 教授)
◆講演1 「海外における未来洞察の政策・戦略立案における活用状況」
七丈直弘 (東京工科大学 教授・IR センター長)
◆講演2 「企業における未来洞察活用の深化~新規事業開発から エコシステム構築まで」
粟田恵吾 (㈱日本総合研究所 未来デザイン・ラボ ディレクター)
◆講演3 「2050年以降を見据えたエネルギー社会ビジョン検討」
高橋玲子 (科学技術振興機構 研究開発戦略センター 環境・エネルギーユニット フェロー)
◆パネルディスカッション
パネラー:登壇者の皆様 司会:鷲田祐一
◆閉会あいさつ 鈴木久敏(横幹連合会長)  (敬称略)

 日時:2017年11月24日
 会場:日本大学経済学部 7号館講堂
 主催:横幹技術協議会、横幹連合

プログラム詳細のページはこちら

  2017年11月24日、日本大学経済学部7号館講堂において、第50回横幹技術フォーラム「未来洞察(Foresight)活動の取り組みの現状とその活用 ‐科学技術融合時代の先取りを目指して‐」が、行なわれた。総合司会とパネルディスカッションの司会は、鷲田祐一氏(一橋大学 大学院商学研究科教授)が務めた。
  昨今、企業や行政の戦略立案の場で、未来洞察(Foresight)という未来シナリオに基づく問題解決の手法が使われ始めているという。これは、10年から20年先という「中程度」の未来について、従来からの手法による予測(Forecast)ではなく、起きる可能性のあるシナリオを多数創造することで、「心構え」を作る手立てとして非常に有用である、と鷲田氏は指摘した。本フォーラムでは、(1) 代表的な未来洞察手法であるHorizon Scanning法の概要を紹介し、(2) 国際活動・学術・企業の3つの視点からの取り組みを通して、Foresightとは何か? なぜ必要なのか? について、その創造性に基づく大きなイノベーションの実現について共に理解して頂きたいと氏は述べた。
  本稿では、最初に Horizon Scanning法の具体的な進め方を、鷲田氏と、講演 2の粟田恵吾氏(日本総合研究所 未来デザイン・ラボ ディレクター)の事例紹介からご紹介する。先ずは、こちらの図をご覧頂きたい。
ForecastとForesight
© Business Futures Network

  鷲田氏は、「2011年3月に起きた想定外の原発事故」などを例に挙げ、10年くらい先の、特に技術予測については「非常に外れやすい」ことを指摘した。この他にも、「携帯電話の普及とその市場規模」についての予測の誤りは、産業振興の過去の多額の公共投資を無駄にした。また、「代替エネルギーの普及予測」についての誤りは、人類の持続可能な未来に暗雲を投げかけている。このように、どうして未来予測が外れるのか、といえば、それは既存の事実の延長上だけから発想するForecast(インサイド・アウトの演繹的推論による仮説)でロードマップを描こうとしているからだ、と氏は指摘した。そこでの真の問題は、専門家たちが「まだ知らないということにすら気付いていない外部の要因」が多数存在することであるそうだ。従って、そうしたリスクを可視化して、同時にそれらの「重要度」「緊急度」を「担当部門の具体的な未来シナリオ」に落とし込む手法が、必ず必要になるのだという。それが、Foresight(「未来洞察」)の求められている理由だと氏は述べた。

  まだ想定されていない未来を洞察するための手法なのだから、専門家がデルファイ法などで一般的に「予測している可能性」の中から選択することは、当然できない。そこで、一橋大学では、突発的な「未来の芽」「兆し」になりそうな事柄を新聞記事などから2000項目ばかり集めており、Foresightのワークショップの際に、その中から気になる項目を200ばかり選び、社会変化の「仮説」として最初に示した図表の縦軸にプロットするのだという。その上で、横軸の「未来イシュー」(Forecast、演繹的推論による仮説)と、縦軸(帰納的推論による想定外の社会変化仮説)の交点の「マス」ごとに、その市場性やリスクについて「もしそれが生じた時は、どういった戦略を取れば良いか」を強制的に発想してみるのだそうだ。それが仮に、「企業の将来」に関わるワークショップの場合であれば、経営管理の視点やR&Dの立場、営業戦略の立場などから、各「マス」の「重要度」や「緊急性」を考えてみるのだという。これがHorizon Scanning法の概要で、この作業のために縦軸に用意される「仮説」としては、例えば、クアラルンプール空港に持ち主不明の「捨てジャンボ機」3機が幽霊船のように放置されている、といった記事が有用なのだそうだ。それは、アジア各国でインフラが整備される前に、航空機が大量に購入されてしまったために起きた出来事らしいのだが、このような「比較的小さな」記事で「現在の延長では予測できないような」事象が大量にストックされているのだという。つまり、未来の予測が専門家の発想だけに偏ると、どうしても「大多数の人が起きそうだと考える未来」がフォーカスされてしまう。それはそれで、行なうべき必要な未来予測ではあるのだけれど、「万に一つ」しか起きないのだが起きた時には致命的である未来のリスクを見つけるためなどには、その方法は不向きで、Foresightのためにはアブダクション(注)を起こして軽視できない未来の仮説を発見する必要があり、Horizon Scanning法は、そうした目的のための手法だと強調した。
  粟田氏は、この手法が大手自動車会社などで、将来のガソリンエンジン車から電気自動車への移行の時期の予測などに使われている事例などを簡潔に紹介した。なお、本フォーラムでは紹介されていないが、鷲田祐一編著「未来洞察のための思考法」(勁草書房、2016)には、ワークショップ実施時の、成果が挙がりやすい参加人数について、であるとか、2006年に行なった10年後の未来予測に対する2016年に行なった評価など、実際にForesightを利用する際に大変役に立つ論考が多数掲載されている。
  また、講演3の高橋玲子氏(JST「科学技術振興機構」研究開発戦略センター 環境・エネルギーユニット、フェロー)は、このHorizon Scanning法を用いて行なった2050年以降のエネルギー社会の未来を洞察するワークショップの事例を紹介した。その報告は、JSTの研究開発戦略センター(CRDS)のホームページに順次公開されるという。なお、高橋氏は、どういったメンバーを集めるかによって未来洞察のシナリオが大きく変化すること。そして、今回は若手の多方面の方たちに集まって頂いたが、今後の人選については、いろいろ工夫してみる必要があることを感想として述べた。
  ちなみに、鷲田氏によれば、Denis Loveridge著「Foresight: The Art and Science of Anticipating the Future」(2008)には、Foresightの歴史が要約されているという。それによれば、このようなスキャニング手法は、Aguilarの「Scanning the business environment」(1967)を嚆矢として、当時の保険料率が高騰していた米国生命保険協会などで活用され、70年代のニューヨークの未来洞察コンサルティング企業や80年代のBusiness Futures Network社(ロンドンが拠点)での啓蒙が広く行なわれたことで多くの顧客を獲得するなど、実務の世界を中心に広がったものだそうだ。なお、諸外国では「国家の政策決定」に未来洞察が目立って用いられているのに対して、日本では、民間企業の戦略策定が主で、行政においては、その傘下の個別研究所などでのアイデア開発として用いられることが多いという。
  ところで、講演1 では「海外における未来洞察の政策・戦略立案における活用状況」と題して、七丈直弘氏(東京工科大学教授・IRセンター長)が、諸外国の取り組みを中心に現状を述べた。氏によれば、オーストラリア、中国、韓国、台湾、タイ、シンガポールなどの多くの国で、未来洞察が国家の政策決定に影響を与えて活用されているという。特に、シンガポール、フィンランドでは、国を挙げて未来洞察による政策決定を進めており、英国では未来洞察のスタッフが議会に直属してステークホルダーの意見を集約する機能を果たしている、と氏は紹介した。このように、Foresightが国家間の、ある意味では共通言語のようになっていることを理解しておかなければ、日本の企業も政府も、中長期的な視野の政策決定において国家戦略上のコミュニケーションが不調になる恐れがあるという。日本も、自国の戦略や国際社会での影響力において存在感と言えるものを示すためには、未来洞察に基づいた戦略の策定事例を増やすことが必要で、そのためにも、この手法に習熟した専門家を量的に拡大する必要がある、と氏は述べた。
  ちなみに、未来洞察の起源に関して、七丈氏はまた別の経緯も紹介した。現在、未来洞察の世界的な権威の一人James Datorハワイ大学教授(国際未来学会元会長)は、学生時代に日本文学を研究するため日本に留学していたのだが、林雄二郎、小松左京、黒川紀章らその当時の気鋭の未来学者の知遇を得たことでこの分野の重要性に目覚め、未来洞察の研究拠点の一つHawaii Research Center for Futures Studiesを立ち上げ、現在その責任者を務めているという。つまり、未来洞察という問題意識についての源流の一つは、明らかにこの「日本」にあったので、70年代の海外の未来研究に大きな影響を与えた日本の先人たちに対して恥ずかしくない活動を今後も行なってゆきたいと氏は述べた。
  ところで、桑原洋 横幹技術協議会会長も、この未来洞察というテーマについて、学会の枠を越えて広く関心が持たれていることを歓迎した。そして、鈴木久敏会長も閉会のあいさつで、「今の科学技術には、専門家の視点からだけでなく生活者の視点なども加えた新しい状況を想定し、そこでの新しい価値を創造することが求められている。今回ご紹介頂いたHorizon Scanning法も、今求められている『社会のための科学』をフレームワークとして実現していることが理解できる。こうした良い試みが、今後もこの枠組みで発展してゆくことを期待しています」と暖かいエールを送り、今回の技術フォーラムを締めくくった。

  (注)アブダクション(遡及推論、仮説的推論)とは、「煮詰まった状態」での大前提が目の前に存在して皆が「困った、困った」と壁にぶち当たっているときに、誰かが議論の場からちょっと離れて、モヤモヤとした外部にある情報群(カオスの縁)から、ふっと明確な解決策をつかみ出して、一緒に悩んでいた人たち皆がその解決策に納得する。そのような推論によって、正しい結論を導く手法であるという。【大前提】から、いきなり誰かが【結論】を思いつき、遡ってその結論の正しさを保証する【小前提】が想起されることによって、ふと思いついた結論の正しかったことが確認できる、ということだそうだ。アブダクションについては、第47回横幹技術フォーラム 「第4次産業革命に向けたサービス科学の役割とビジネス応用に向けた課題」の中で、阪井和男 明治大学教授が、非常に明快にその「知の創造」のプロセスを解説している。「創発へのプロセスにおいては、アブダクションの連鎖が決定的に重要な役割を果たしている」とする氏の講演内容については、こちらをご参照頂きたい。
   

 EVENT

【これから開催されるイベント】

●日本品質管理学会 H29年度QMS-H研究会 成果報告シンポジウム
 日時:2018年3月3日(土) 会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス

●経営情報学会 2018年春季全国研究発表大会
 日時:2018年3月8日(木) ~9日(金) 会場:筑波大学 東京キャンパス

●計測自動制御学会 第5回制御部門マルチシンポジウム
 日時:2018年3月8日(木) ~11日(日) 会場:東京都市大学 世田谷キャンパス

●日本信頼性学会 2017年度第2回信頼性フォーラム
 日時:2018年3月13日(火) 会場: 日本科学技術連盟 本部(西新宿)

●日本オペレーションズ・リサーチ学会 2018年春季シンポジウム (第78回)
 日時:2018年3月14日(水) 会場:東海大学 高輪キャンパス

●日本品質管理学会 JSQC規格「品質管理教育の指針」講習会
 日時:2018年3月15日(木) 会場: 日本科学技術連盟 新宿本部

●日本オペレーションズ・リサーチ学会 2018年春季研究発表会
 日時:2018年3月15日(木) ~16日(金) 会場:東海大学 高輪キャンパス

●精密工学会 2018年度精密工学会春季大会
 日時:2018年3月15日(木) ~17日(土) 会場:中央大学 後楽園キャンパス

●日本品質管理学会 統計数理研究所、日本統計学会、応用統計学会、日本信頼性学会 共催 第7回科学技術教育フォーラム  科学技術立国を支える問題解決教育
 日時:2018年3月24日(土) 会場:電気通信大学 100周年記念ホール
テーマ:『次期学習指導要領の目指す人と社会』

●日本感性工学会 第13回日本感性工学会春季大会
 日時:2018年3月27日(火) ~28日(水) 会場:名古屋大学 工学部 電子情報館

●日本品質管理学会 第106回クオリティトーク(本部)
 日時:2018年3月28日(水) 会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル

●日本品質管理学会 第107回クオリティトーク(本部)
 日時:2018年5月11日(金) 会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル

●システム制御情報学会 第62回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI'18)
 日時:2018年5月16日(水) ~5月18日(金) 会場:京都テルサ

●日本経営工学会 2018年春季大会
 日時:2018年5月25日(金) ~26日(土) 会場:名古屋工業大学 御器所キャンパス

●日本品質管理学会  第116回研究発表会
 日時:2018年5月26日(土) 会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル

●日本シミュレーション&ゲーミング学会 2018年度春期全国大会
 日時:2018年5月26日(土) ~27日(日) 会場:東京工業大学 田町キャンパス

  => 詳しくは 横幹連合ホームページの「会員学会カレンダー」
  【会員学会のみなさまへ】開催情報を横幹連合事務局 office@trafst.jpまでお知らせ下さい。