粒子フィルタ

概要

状態空間表現を用いたモデリングが時系列予測や統計的制御を行う場合によく使われている。線形モデルでかつノイズがガウス分布(正規分布)の場合はカルマンフィルタを用いることによりモデルの状態推定が可能である。モデルが非線形でも線形近似ができる場合には拡張カルマンフィルタが使える。しかし、線形近似では不十分な場合や、確率分布がガウス分布でない場合は、拡張カルマンフィルタでは満足のいく結果が得られない。北川は1993年に、非線形・非ガウスの問題も扱える粒子フィルタを提案した。この提案は、モンテカルロ法を用いてフィルタ分布に従った乱数を発生させることからモンテカルロフィルタと呼ばれている。一方、同時期に Gordon et al.はブートストラップフィルタという名称で同様の方法を提案しており、これらの方法は「粒子フィルタ」と総称されている。システムモデル、観測モデルとも線形にする必要がなく、ノイズもガウス分布に限ることなく、二項分布やコーシー分布などでもよい。このことから、自然科学、社会科学、生命科学、工学などにおいて、複雑なモデルを仮定しても、推定が可能になった。例えば、気象学等の分野で用いられるデータ同化でもよく用いられており、エルニーニョ現象の解析などで多くの実績をあげている。

コトつくりにおける訴求点

粒子フィルタは科学・技術・社会科学において標準的手法となっている。邦文、英文による入門書が多く書かれていることからも、その重要性が評価されているものと考えられる。また、粒子フィルタは、カルマンフィルタに比較すると計算コストは大きいが、実装への手間や条件の自由度においては優位性があり、気象や金融市場、電力利用の予測からターゲット追跡やロボティクスなど、幅広い分野へ応用活動が展開されている。特にターゲット追跡においては複数対象追跡への応用が活発化しており、今後さらなる展開が期待される。これらの活動はプログラムが比較的容易に作成できることや計算機の高速化などが相まって生じているものと考えられ、今後はこうした活動がさらに活発化することが予測される。

参考URL

推薦論文

粒子フィルタ~線形ガウスの枠を超えた汎用な状態推定法

講評

粒子フィルタとは時系列的に得られた観測値から状態推定や予測を行い、広義では状態空間モデルの同定を含む計算方法の一種であり、ベイズ統計学の考え方にもとづいているものである。特徴としては非線形・非ガウスのモデルに対する近似解法として、その汎用性の高さが挙げられる。また、遺伝的アルゴリズムとの類似性があり、深層学習を行うようなロボット工学や多数センサを用いた状態推定の分野においても積極的に活用されている。コトつくりとして考えた場合、これらは先導力や規範力という観点において高く評価できる。コトつくりそのものとしては、計算アルゴリズムが比較的シンプルであったことと、計算機の処理能力向上が粒子フィルタの普及に大きく貢献したものと考えられる。並列処理型の計算機がより普及した場合、さらに波及することが見込まれる。

コトつくりに特に寄与した要因

  1. 実社会において発生するであろう問題を想定した理論構築
  2. RやPythonなど、身近な言語環境における活動の活発化
  3. アルゴリズム構築の容易性

前の記事

情報幾何

次の記事

品質機能展開