No.84 Feb 2026
TOPICS
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〇 以下の論文もJ-STAGEに掲載されています。
多価値相克状況における合意形成のための動的参照モデル 2021年
SDGsに資する産官学プロジェクト形成 2023年
横幹知で推進する DX 調査研究会の紹介 2022年
コトつくり至宝発掘事業 横幹.Vol. 17. No. 3 2024.
(編集室注釈) 2022年7月の「日本学術会議と国内の学協会連合等との連携に関する調査」報告会で安岡善文前会長の報告された「横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)の紹介ー活動と考え方ー」を参考に、本連合の主な活動(会誌『横幹』掲載記事)をご紹介した。選択は編集室の文責による。これらをTOPICS に掲載した理由は、「横幹連合って何をしているの」という質問を友人から受けたためで、今後にColumnでも 「木村賞」「TD(Transdisciplinary)概念とその研究評価システムに関する調査」「横幹知で支援すべき国際標準化活動」などを含めた内容紹介を行いたい。
なお、上述の報告会で横幹連合の活動については、”「異分野を俯瞰する事実知」「異分野を統合する使用知(構成知)」「社会的期待を発見する意味知」の探索、さらにその成果を社会に繋ぐこと は個別の学会では難しい。学会連合の役割は学を繋ぎ、さらに社会に繋ぐ活動を推進することにある” と紹介された。
COLUMN
第16回横幹連合コンファレンス発表論文予稿が J-STAGEに公開されました。
2025年12月に行なわれた第16回横幹連合コンファレンスの予稿がJ-STAGEに公開されたので、編集室の文責でいくつかを紹介させて頂く。紹介する予稿は、企画セッションから大会関係者が注目した論文を参考にさせて頂いた。なお、以下の文章における要旨・索引用語についての文責は編集室に帰属する。また、いくつかのJ-STAGEに掲載されていない論文は オンライン予稿集を参考に紹介した。(掲載順は発表順。)なお、編集室が独自に注目した <一般セッション> は、本記時の内容が多くなるので次号に掲載したい。
13P2-F03 共創活動による地域文化と伝統の可視化:中能登町どぶろくの魅力発信プロジェクト
[大懸 崇一郎(北陸先端大) 村山 祐子(金沢工大) 島田 淳一(北陸先端大)]
要旨: 本研究は、石川県中能登町において、文化遺産、発酵製品、そしてどぶろく(原酒)の消費者体験を統合した共創の枠組みを通して、地域文化の再生を目指している。大学コンソーシアム石川「地域課題研究ゼミナール支援事業復興課題枠」と北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)未来デザイン研究センターにおいて実施される本プロジェクトは、2024年能登半島地震後の復興への道筋として「文化を通じた心の復興」を位置づけている。
本研究で提案する四層構造モデルは、(1)地域調査による文化理解、(2)発酵プロセスの簡易モニタリングとアーカイブ化による生産支援、(3)官能分析と食品の組み合わせによる消費者体験(エンゲージメント、継続的な住民参加)を結び付ける。フィールド活動には、蔵元へのインタビュー、発酵の定量的観察、共同ワークショップが含まれた。その結果、醸造、味覚、そして地域の文化的価値の認識といった隠れたプロセスが可視化され、暗黙知がデータとして共有され再現可能な形に記録された。これらの活動は、世代間の理解を深め、科学知・社会知・経験知を往還的に共有する仕組みを通じて生産者の自信を高め、消費者にどぶろくの多様性を再発見してもらうことに繋がる。また、このプロジェクトは、文化的・信仰的な伝統の継承により地域の復興と未来志向のコミュニティデザインがいかに促進できるかを示している。
索引用語: どぶろく、社会共創、文化継承、官能評価、未来社会デザイン J-STAGE
14A1-C04 人々はAIによる理由なき自動判断や決定を受容するのか ― 予備的質問紙調査による測定枠組みの検討 ―
[岡田 勇(創価大学)]
要旨:本研究は、AIが(深層学習や生成AIの発展により、AIが「なぜその結論に至ったのか」を説明しないまま)十分な理由なしに判断・決定を下している現状、いわゆる「理由なき自動判断」に対する人々の傾向を評価するための質問紙を構築し、その受容構造の妥当性を予備的に検証することを目的とする。72項目からなる質問紙を用い、Yahoo!クラウドソーシング(2025年10月実施)を通じて203名から回答を収集した。(注:質問紙の内容は例えば「場面15 [量刑判断] 裁判所にAIが導入されました。 AIは被告人の過去の記録や事件の性質を分析し、刑の重さを提案しますが、その提案の妥当性や公平性について十分な説明がなされるわけではありません」など。)
信頼性分析などの結果(人々の)AI受容全般、ドメイン固有シナリオ、日常生活におけるAI態度、心理特性(革新性、曖昧さへの耐性)に関する尺度は、いずれも概ね十分な内部一貫性を示していることが明らかになった。さらに、AI受容に関する項目(Q1-60)の単純平均分析、探索的因子分析、クラスタ分析の結果、AI受容は「信頼」「主観性」「専門性」「主体性」の4つの次元で構成されている可能性が示唆された。これらの分析は、質問紙項目の妥当性を確認することを目的としている。
今後、計画されている大規模調査(N=2500)に向けて、項目の多次元構造モデルを精緻化しAI受容の心理的基盤の明確化を継続する。
索引用語:質問紙調査、予備調査、AI受容 J-STAGE
14P2-C02 科研費データに基づく研究分野の開放性・学際性の定量化の試み
[吉田光男(筑波大学)]
要旨:複雑な社会的課題に対処し科学を進歩させるには、学際的研究(IDR)が不可欠だが、多分野間で一貫した測定指標を用いることが困難である。そこで、科研費の配分記録を包括的に抽出し、分野レベルで3つの指標を定量化した。それらは、分野の開放性(他の分野で活動していた研究者がその研究の研究代表者(PI、Principal Investigator)に迎え容れられた割合、初めてのPIを除く)、チームの学際性(PIとしての活動履歴などから共同研究者の「ホーム分野」を特定し、採択時のチームの多様性を正確に捉える)、および共同研究比率(少なくとも2人の研究者がいる採択の割合)である。
k=4のk-meansクラスタリングを適用して、領域内部における複数分野による研究と境界領域を越えた統合を分離できる類型を導き出した。その結果、共同研究が盛んな領域であっても、必ずしも分野の開放性やチームの学際性と一致しないパラドックスが明らかになった。
例えば、口腔科学は共同研究は盛んであるが(52.6%)、開放性の低さ(3.5%)とは合致しない。対照的に、チームの学際性においてはブレインサイエンス(79.8%)、応用情報学(74.3%)、腫瘍学(73.1%)、人間医工学(71.6%)で高い割合を示しており、分野境界をまたいで統合が進められている。この分析結果は、PIのホーム分野に配慮した上での評価判断が必要になることと、IDRを育成する方針として表面的な指標(共同研究者数や申請分野コードの多さ)に依存することによる危険性を示している。
索引用語: 科学の科学、分野の開放性、チームの学際性、共同研究、科研費
14P2-C04 基礎科学者の非対称的影響力の解明: 6,200万論文の大規模分析による横断的研究
[カク リクエイ 尾藤実伽子 四本恵太 坂田一郎 浅谷公威 (東京大学大学院工学系研究科)]
要旨: 基礎研究は広く評価を受けているにもかかわらず、「科学」は基礎科学者を疎外する方向に応用的変化を遂げている。
本稿では機械学習と大規模言語モデルを使用して、スケーラブルな指標である「アプリケーション スコア」を導入し、最も基礎的(0)から最も応用的(1)までの範囲で、個々の研究を位置付けた。それを6千200万件の論文(1970年~2023年)に適用したところ、構造的な非対称性が見つかった。基礎科学者の関与により、引用の影響が38%も増加し(5年間のフィールド加重引用インパクトFWCIで上位1%にランクインする可能性についても約25%高くなり)、応用分野では、更なる増加が見られたのだが、応用科学者は基礎領域でそうした効果を示さなかった。
この非対称な効果は、概念化、執筆、実験設計における基礎科学の知的リーダーシップから生じており、大規模な学際的チームで増幅された。これらの研究結果は、基礎科学者の不可欠な役割を証明している。特に、学際領域での活用が期待できる。
索引用語: 基礎研究、応用研究、科学的インパクト、大規模言語モデル、引用分析
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(編集室から)本号に続けて、次号に第16回横幹連合コンファレンス<一般セッション> を紹介する。編集室が特に注目したのは、14P1-D01「守る対象の核心からセキュリティにまつわる諸概念の本質を再考する価値とは何か、そして存在し続けるとはどういうことなのか」14P1-D03「玉川上水に見る公共性の変遷」などである。しかし、お世辞でも何でもなく、全ての予稿について拝読はとても楽しかった。予稿はJ-STAGEに公開されて、様々な視点からの共感を得る可能性が高い。これはあくまでも私見だが、横幹科学の性質上、論文指標は被引用数が重要ではなく、引用されなくても多角的な視点を与える論文が高価値であることに目を向けるべきである。
ちなみに、吉川弘之名誉会長は「持続可能な成長」のための産業システムの重心移動について、”企業自らが気付いて” 俯瞰し・統合して・その意味を発見すること、をかねてより強調しておられる。基礎科学が、社会の持続的発展に貢献する方向に学を繋ごうとしている、その実例を垣間見ることのできるのが横幹科学なのだ。
EVENT
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