情報幾何

 概要

情報幾何は1980年代初めに甘利俊一氏により構築された。情報幾何では確率密度関数の空間に情報計量の概念と、m-接続およびe-接続と呼ばれる2つの線形接続が導入された。そして、この2つの接続は情報計量によるリーマン接続に関して双対的であることが示され、確率密度関数の空間に対して双対リーマン空間としての枠組みが構築された。これを通じて、統計学の基本的な考えである統計モデルの情報量,統計量の十分性、推定量の有効性の統一的理解がもたらされた。

 コトつくりにおける訴求点

情報幾何は、ランダムネスを扱う様々な研究分野、例えば情報理論、信号処理、量子物理、人工知能、機械学習などに大きな影響を与えた。情報幾何が提唱されて以来、多くの日本の研究者に影響を与え、日本発の研究として情報幾何の研究が盛んになり、同時に世界的な展開が成された。最近では最適輸送問題、深層学習などの最先端の研究にも深く関わっており、2018 年に Springerから Information Geometryが刊行されている。このように、情報幾何の精神による新たな発想が提示されて以来、実問題の解決から数理的な新概念の構築など、幅広い分野にわたって更なる挑戦が継続されている。

 参考URL

 推薦論文

さまざまな研究パラダイムをつなぐ情報幾何

 講評

情報幾何は確率統計に微分幾何の概念を導入し、確率を幾何学的に理解しようとする試みであり、これにより確率を全く別の数学的観点により記述および計算しようとするものである。特に機械学習や熱力学のようなランダムネスを取り扱う研究分野に対して新たな視座を与え、多くの研究者に影響を及ぼした点において、極めて高い先導力と意味力のあるコトつくりであると評価できる。提唱した甘利俊一氏の貢献は大きいものと推測されるが、コトつくりとして考えた場合、論文が様々な学会誌にて却下されながらも世界中に広がった点を鑑みるに、初期に甘利氏が情報幾何の概念を提案した際に理解を示した竹内啓氏を代表とした「理解者の存在」が極めて大きいといえるであろう。コトつくりにおいて、理解者の存在が大役を担うことを示す好例といえる。

 コトつくりに特に寄与した要因

  1. 領域横断的な視野でものごとを考える姿勢
  2. 既成概念から外れた提案であっても適切であればそれを許容、理解しようとする姿勢
  3. 理解者の存在と不理解に対する許容姿勢