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  3. No.070 Aug 2022
2022年8月21日 / 最終更新日時 : 2022年8月24日 newsletter

No.070 Aug 2022

目次

  •  TOPICS
    • 〇 第13回横幹連合コンファレンスのお知らせ
    • 〇 新しい「横幹図」が作成されました
  •  COLUMN
    • 新著『商品開発・管理の新展開』(2022年)と 既刊「商品開発・管理入門」(2007年)を通して見る「商品開発・管理学会の横顔」
  •  EVENT
    • 【これから開催されるイベント】

 TOPICS

〇 第13回横幹連合コンファレンスのお知らせ

第13回横幹連合コンファレンスは、2022年12月17日(土)、18日(日)に早稲田大学国際会議場(東京都新宿区)を拠点として開催されます。

 企画セッションの募集中です。 【こちらまで】

〇 新しい「横幹図」が作成されました

 

横幹ニュースレターでは、次号11月号Columnに新しい「横幹図」の特集記事を予定しております。

ご意見をお持ちの方は、是非、コメントを事務局宛てメールにてお寄せ下さい。

 COLUMN

新著『商品開発・管理の新展開』(2022年)と 既刊「商品開発・管理入門」(2007年)を通して見る「商品開発・管理学会の横顔」

 武田博直 ( 横幹ニュースレター編集室長、日本バーチャルリアリティ学会 )

 

 今回は「商品開発・管理学会の横顔」をご紹介させて頂きたい。

 「商品開発・管理学会」は、2001年に設立された 商品開発・管理研究を専門とする学術組織である。横幹連合には「商品やブランドの開発・管理を通じて 現代社会の問題の解決に挑戦する」と自己紹介された。

 まず初めに「横幹連合の他学会の会員から見た」視点で、新著『商品開発・管理の新展開』(2022年、中央経済社)の内容を瞥見させて頂く。抜粋と要約は、文責 編集室である。

 例えば、たまたま「SDGsに関心のある読者」が、新著『商品開発・管理の新展開』を手に取ったと仮定しよう。読者は「地球環境の持続可能性をめざす商品開発・管理」(執筆者:宮崎茂次氏)という章題に着目し、この章から最初に読み始めるかも知れない。

 ということで、先ずは 本章の内容から「持続可能性をめざした商品開発」は、どのような切り口で解説されているかについて見てみたい。

 新著の本章 pp.46-53 には、3つの事例が紹介されている。

 ① 三菱ケミカルホールディングス社の持続性経営方針
 ② NEDO 環境調和型製鉄プロセス
 ③ 植物工場

 ①「三菱ケミカルホールディングス社の持続性経営方針」

 同社は「三菱ケミカル」を始めとするグループ会社であるという。基本的な「経営学」軸を主軸に、「技術経営」軸、「持続可能性経営」軸を経営の柱に加えているという。その上に、更に「時間に沿って事業を発展させる」という時間軸の経営概念を加えたそうだ。

 具体的には、同社に所属する 5つの製造会社に対して、《列》に68事業部門、《行》には、「快適」「健康」「サステナビリティ」の大分類を置いた概念図を作成したという。

 《列》 ・・・・・・ 68の事業部門

 「快適」「健康」「サステナビリティ」の大分類を《行》に置く

 更に「サステナビリティ」の大項目の内には、その小分類として、

 「客先CO2削減」「長寿命化」・・・

などの 56の指標を与えたそうだ。その結果が一覧できる 68×56のマトリックスにおいて、各自の評価をそこに書き示すことにより、目標ベクトルと実績ベクトルが「経営の可視化」として見やすくあらわせたという。

 この評価マトリックスをふまえて、同社では「KAITEKI価値をめざす経営」という基本戦略を立てている。最適化された循環型社会などの目標を、現在追及しているそうだ。

 ② NEDO「環境調和型プロセス技術の開発」

 【参照Web資料】https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100050.html 

 ここでは NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「水素還元等プロセス技術の開発」(フェーズII-STEP1)(2018年度~)が簡潔に紹介された。

 鉄鋼業は我が国の産業部門の中でも最大のCO2排出業種であることから、特に排出量の多い高炉法による製鉄プロセス技術について、新しい環境調和型プロセス技術の開発を現在行なっているという。最終的に製鉄所における現状の全排出レベルに比較して「約30%のCO2削減」を可能にする技術を、現在開発しつつあるそうだ。(2017~22年度の事業)

 ③「植物工場」

 消費者の健康志向、安全安心への関心の高まりから植物工場が注目を集めているという。

 付加価値の創出としては「工場生産された植物の加工品についての新商品開発が期待されている」と、ここでは指摘された。また「環境持続性」に関して、人工光が太陽光に比べて低いことも指摘された。これらは「植物工場」に関して、今後の大きな課題であると言われているそうだ。

 以上に、当学会編による新著『商品開発・管理の新展開』の ごく一部を紹介した。

 ここまでの説明で「商品開発の視点」で「地球環境の持続可能性をめざす」というテーマがどのように議論されるかの一端を感じて頂けたのではないだろうか。

 新著『商品開発・管理の新展開』には、後でもう一度戻りたい。

『商品開発・管理入門』(2007年、中央経済社)

ここから、既刊書『商品開発・管理入門』の何章かを選んで、上と同様の要約で「付加価値を付ける商品開発実例」を見て行きたい。なお、同書は、2000年に創立された同学会が 5周年を迎えたことで企画された記念出版であったという。

 ④ 「商品開発のフレームワーク」(SONYなどにおける商品開発の基本)
 ⑤ 「NISSAN X-TRAIL」
 ⑥ 「大学における教育開発とマーケティング」

 ④ 「商品開発のフレームワーク」

 最初の「商品開発の基本」の章では、執筆者の初代会長(故)横田澄司氏が、次のように問題を整理されている。まず同書では「商品開発・管理」の定義を、「新しい市場の創造と その商品を核とする新産業の振興・育成である」と捉えているという。そして、商品開発の「イノベーション」は「高付加価値商品の開発」である、と考えられているそうだ。

 初めに、「ソニーで開発担当者に尊重され 精神的支柱になっている『研究5原則』」が紹介された。総合研究所 宮岡千里氏の定めた原則であるという。

 第1原則:その研究は、新しいビジネス領域を開拓できるか。
 第2原則:その研究は、ソニーのどのビジネスに、いつ役立つか。
 第3原則:その研究は、どこにオリジナリティがあるか。
 第4原則:その研究は、世界のトップ・レベルにあるか。
 第5原則:その研究は、事業部が剥ぎ取りに来るほど魅力的か。

 先に紹介した ①②③の 3つの事例も、この 5原則に則っていることが理解できる。

 そして、推奨するアプローチとして、次のような 商品開発の「計画書」(仕様書)の作成を横田氏が提唱されている。(「新しい市場・新産業の育成」の理念を具体化する手法で、ソニーに限定した用途ではない。)

 例えば、SDGsなどの「まだ存在しない商品の開発」のスケジュールは、この計画書の形式に一度書き写してみることで、その進捗を的確に管理できる可能性があると思われる。

 「商品名」「開発目的」「用途」「対象(顧客のプロフィール)」
 「商品コンセプト(イメージ、キャッチなど)」
 「設計図」「素材と部品」「使用する機械設備」「加工手順(PERT)」
 / 「完成図」 /
 「原価表、必要経費」「日程計画」「担当者リスト」
 「試作品提出日時と検討会日時」
 「生産数量」「生産上の留意点」「販売上の留意点」

 既刊書 pp.16-18 の要約である。段落分けは、本Column筆者が 内容から考えて行なった。

 ちなみに、本Columnの筆者は VR技術による都市型テーマパークの大型アトラクションの開発に携わっていた。安全認証を得て外国でも運営が可能な製品(1号機)と その量産用図面、運営マニュアルを完成させた。そうした分野での経験からも、横田氏提唱の「計画書」は「かゆいところ」に手の届く「行き届いた」内容に感じられる。分野を問わず参考になる仕様ではないだろうか。

 そして同書の別の章には、米国シュミット教授の「戦略的経験価値モジュール」が詳しく説明されている。これも非常に優れた価値分析の手法の一つであるそうだ。

 ⑤ 「戦略的経験価値モジュール」による分析

 ここでは国産車「NISSAN X-TRAIL」について、次の表が示されている。(執筆者:長沢伸也氏、既刊書 p.190)

 この経験価値モジュールに関しては、後の「ラグジュアリーブランド」⑨ で もう一度触れる。

 ところで次に挙げるのは、個人的に非常に面白いと感じた「商品開発」の事例である。「大学における教育開発とマーケティング」(執筆者:井下理氏)について、1章があてられ紹介されている。関心を持たれる方も多いと想像されるので、少し詳しく要約しておきたい。

 ⑥ 「大学における教育開発とマーケティング」

 既刊の『商品開発・管理入門』の本章では、大学組織の機能を「教育」「研究」そして「社会サービス」であると捉えているそうだ。

 マクロの視点では、大学の「顧客」は学生であり、また「製品」(成果物)も学生であると定義できるという。従って、大学における「マーケティング」を考えるにあたっては、NPO、NGO、自治体、病院のような非営利組織のためのマーケティングである「ソーシャル・マーケティング」と同じ考え方が適用されるそうだ。その成果物の品質を高め、顧客満足を高めるためにも「大学にマーケティングは不要である」という主張は全くの的外れだ、と指摘されている。ここでは、マーケティングの枠組みの基礎が、4つの P、Product(製品やサービス)、Place(場所や立地)、Promotion(販促)、Price(価格)であることが論じられた。そして、詳細に項目を挙げて学内の様々な活動がマーケティングの観点から分析できると主張された。有名校の事例も紹介されている。

 ここで、本書の紹介から少し離れるのを、お許し頂きたい。米国におけるマーケティング論は、農産物の流通問題や 1870年代からのカタログ販売に並行して理論化されてきたと言われている。この「商品」についての販売促進というマーケティングの概念を、非営利の公共サービス部門に拡張して学問の扱う対象をより広くより深くしたのが、フィリップ・コトラーの著書『非営利組織のマーケティング戦略』(原著1975年、日本語訳は1982年の第2版以降)だったそうだ。「ソーシャル・マーケティング」という考えは同書で有名になったものだそうだが、実際に米国の大学などがやってみたところ「論より証拠」で、成果物(学生)の品質が向上し、企業から大学への寄付金が増えたと評されている。

 興味を持たれた読者は、ぜひ、既刊書『商品開発・管理入門』で続きをお読み頂きたい。

ここから再び、新著『商品開発・管理の新展開』(2022年、中央経済社)に話を戻したい。

 ⑦ 「商品開発・管理研究の意義」
 ⑧ 「BtoB企業の消費者ニーズ駆動型商品開発・管理」
 ⑨ 「ブランド表現の戦略」

 ⑦ 「商品開発・管理研究の意義」

 本章(執筆者:若林靖永氏)では、製品イノベーション研究についての 6つの視角が解説された。

 日本人の戦後に学んできた「マーチャンダイジング」(商品政策、商品化計画)は、米国の1929年の大恐慌をふまえて「売れるものを売れる価格で適切に提供する」ための政策であったことが、ここでは紹介された。それは、減退した消費者需要に ていねいに対応するための「既存の製造設備」の活用であったという。(三浦信氏の研究などを参照している。)

 「マーチャンダイジング」の時代の高品質・低コストの製造プロセスを経て、商品開発のポジショニングは(顧客志向の変化に伴って)「ブランド化」「新カテゴリーの創造」などに移行しつつあるのだという。顧客志向マーケティングによる差別化であるそうだ。「商品開発・管理学会」の創立も、その移行に伴っての時代の要請であったことが推察される。

 ここでは他に、モノとサービスを区別なく捉える事の重要性や 組織の戦略的提携、「手戻り」をなくす開発手法なども簡潔に紹介されているのだが、残念ながら、本稿では紙幅の都合から割愛をさせて頂く。そして、この章の最後に「革新的なビジネスアイデア」と題して「起業家」が問題発見をする際の方法が具体的に紹介されている。

 起業機会の積極的・無意識的探索

   ↓

1.業界への不満・問題意識
2.既存事業への危機感(必死さ)
3.夢(好きなこと)の発見・追及
4.事業の考え方の変化
5.仕事に対する不満        →    1.既存事業の革新
                      2.第2創業
                      3.脱サラ起業

                 ↓

        (両者の組み合わせ 5×3 = 15のパターン)

「起業家的発見の方法」(出所:佐藤善信「企業家精神のダイナミクス: その生成、発展および発現形態のケース分析」,関西学院大学研究叢書, p.55(2017))

 例えば、SDGsのための「まだ存在しない新商品の開発」については(私見であり、ここでは説明しないが)大学の若手研究者などが「起業家」となり、海外の国家的な支援の得られるインキュベーション施設などに短期の研究出向をする、といったケースがこれから増えるかもしれない。顧客志向マーケティングによる新産業の創造である。

 ⑧ 「BtoB企業の消費者ニーズ駆動型商品開発・管理

 ここでは、BtoB(企業間取引、Bは Business)の商品開発を専らとする企業についての提言が述べられている。BtoB企業は、BtoC(一般消費者向けの販売)企業の下請けになりやすいので、その状況を脱却するために「消費者ニーズ」を取り込んだ製品開発プロセスを取るべきである、と 執筆者の安川雄一郎氏、余田拓郎氏のお二人が提言された。日本企業は高性能・高機能な部品や素材を世界に提供してきたが、製造業の利益率は長期にわたって低下しているのだという。本章ではこの分析のフレームワークが図示されている。

 事例紹介として、日本テトラパック株式会社の「紙容器」、ナブテスコ株式会社の「建物用自動ドア」などが紹介された。ここでは、BtoB企業が BtoC企業を上回る消費者のニーズ情報を得ることによって、それが自社の高い技術力の開発プロセスに結びついた場合に顕著に、製品価値が高まり市場から歓迎されるそうだ。

 ⑨ 「化粧品デザインにおける経験価値とラグジュアリー戦略」

 ラグジュアリーブランドという言葉を聞いて誰もが思い浮かべる「ルイ・ヴィトン」などの商品には、その流通、プロモーションにおいて「価格で競争しない」「創造力と独自性を武器にする」という明らかな戦略があるという。

 ここでは「化粧品」の有名ブランドについて、その戦略が分かりやすく分析された。そのために必要とされる要素を、執筆者の長沢伸也氏は次のように 3点指摘されている。

(1)ブランドイメージや 起業イメージがひと目でわかる
(2)デザイン要素の一つひとつに ストーリーが内包されている
(3)他にはない革新性や 特別感がある

 長沢氏によれば、「ラグジュアリー」は 最上級・最高無比(superlative)であるのだという。ちなみに、混同されることの多い「プレミアム」は比較級(comparative)であり、更に、「ファッション」が刹那(instant)であることに対して「ラグジュアリー」は悠久(timeless)を意味しているそうだ。それゆえに、従来の大衆消費材を対象としたマス・マーケティングとは根本的に違う販売戦略が必要とされるという。

 ここでは、新商品の「機能性便益」と ⑤の「経験価値モジュール」(SENSE、FEEL、THINK、ACT、RELATE)が掛け合わせて分析されているという。例えば、シャネルの化粧品の場合は、他にはないパッケージデザイン、新たに開発された容器の機能、塗装などが、新商品を五感で楽しむ商品として位置付けられていたことなどが鮮やかに分析された。

 □■□■□■□■□■□■□■□■

 さて、以上に、新著『商品開発・管理の新展開』と既刊書「商品開発・管理入門」について、その内容の一部を紹介させて頂いた。なお、ここまでの文責は編集室である。

 最後に、会長の長沢伸也氏よりコメントを頂戴したので、ここではインタビュー形式でご紹介する。ご協力に心より感謝申し上げます。

 【編集室】

 長沢先生が会誌『横幹』Vol.15 No,1 に掲載されました「会員学会紹介」に「商品開発・管理学会設立趣意」が掲載されており、その内容に、私は大変に驚かされました。

 「20世紀は、総じて日本企業が(略)高品質、高性能、低コストに向けて努力を積み重ねてきた。そしてそれなりに多くの日本企業は成果を収め、海外での高い評価を受けるに至った。21世紀を迎えた歴史的な転換期に、日本企業は世界の中のリーディング・カンパーとして、旧来の姿勢を改め、積極的に商品開発を推進し、富める国、貧しい国に関係なく文化水準の高い生活を支援し、貢献することが責務と思われた。」(下線 編集室)

 この設立趣意は、SDGsなどが話題になる はるか以前に書かれたものでした。そして、その後半は、こう続きます。

 「わが国の産業では、ハイテクノロジーやニューサービスなどの革新が進行しているが」多くの分野に「一層の期待が寄せられている。」「日本企業は(略)さらに技術革新を進展させ、新事業として確立、発展させ(略)そのような挑戦を通して、わが国が 21世紀の国際社会において、確固とした尊敬と信頼を獲得する」だろうと宣言されています。

 「商品開発・管理学会」の現在と、今後についてお話頂ければと存じます。

 (参考資料)長沢伸也 「会員学会紹介」 
 「商品開発・管理学会 -商品やブランドの開発・管理を通じて現代社会の問題の解決に挑戦する-」『横幹』Vol.15 No,1
 なお、「会員学会紹介」の中で本学会の「付属研究所」が紹介されており、地元企業を支援したり、地域社会と協力して新規産業を興すためなどの産業創出の実践的研究に尽力されていることについて触れられている。

【長沢伸也会長】

 いわゆるヒット商品について最初にお話ししますと、「ヒットしたのは商品が消費者の感性に合ったから」と解説されることが多いようです。しかし、そうした後付けではなく「消費者の感性に訴えるように商品を作り込む」ことを目指すべきではないでしょうか。新著『商品開発・管理の新展開』(2022年)を上に取り上げて頂きましたが、同書については「まぐれ当たりではなく“ヒットするべくしてヒットする”商品や“高くても売れる”商品を生み出し、適切に管理するための理論を多岐にわたる分野から考察する」と帯で説明しています。

 本学会は(ご指摘いただいた通り)SDGsが話題になる はるか前の 2000年5月から活動を始めました。

 これまでの日本の商品政策(マーチャンダイジング)では、高品質・低コストの製造プロセスに力が注がれました。

 日本で商品を造ると高くなるので、日本企業は工場を中国の沿岸部に移転し、人件費が上がると内陸奥地にシフトして、そこでまたコストが上がると今度はタイ、ベトナム、ミャンマーと目を向けました。アフリカまで行ったらもうその先はないのに、いったい何時まで、何処まで流浪し続けるのでしょう。この流れは、コストダウンの消耗戦から抜け出せないことで、ブランドも企業も疲弊して、せっかくの価値も目減りするという危険を生じます。

 「日本で作ると高くなる」のであれば、日本らしさを生かして、日本で造ったことから「高くても売れる」「高くても熱烈なファンを生む」商品やブランドを目指した商品開発・ブランド戦略を取ること、しか選択肢のないのは明らかです。

 ここでは、顧客の経験・体験を創造し差異化する方法を考えてみます。

 このためには、製品・サービスだけではなく、状況も併せて作り込むことが望ましいのです。特別な状況が特別な経験を生む、という場合があるからです。非常識な状況、非日常な状況などがその一例です。

 例えば、京都の高級旅館「星のや京都」は、車で行くことができず、嵐山の船着き場から船で宿へ渡る必要があります。車を使えないという到達容易性を下げた非常識な状況を創り出すとともに、渡し船で行くという非日常的な経験を演出しています。

 「感覚的価値」「情緒的価値」に基礎を置いた顧客の「非日常」な肉体行動への引き込み、そして「高級」「上品」という「準拠集団への帰属価値」への(押し付けではない)促しは、「星のや京都」の おもてなしの演出の一部になっています。これは、新製品・サービスを 単に「顧客に提示する」ことではありません。

 高級ブランド商品の場合も、パリや銀座の一流店で商品を購入するという「非日常」に顧客は「帰属価値」を感じています。しかし、このような特殊なエクスペリエンスの演出も、高額商品の専売事項ではないのです。価値を向上させる努力を保ち続けることが高級ブランドには特に顕著に見られる、ということを示します。

 ところで、日本のものづくりの技術力は凄いが、価値づくり・商品づくり・ブランドづくりは まだまだである、ということも良く指摘されているのです。例えば、高級時計の製作、製パン業などでも、高級ラグジュアリーブランドになる可能性を持つ日本の製品がそうなっていない理由は、次のうちどれかを欠いているためです。

(1)ブランドイメージや 起業イメージがひと目でわかる
(2)デザイン要素の一つひとつに ストーリーが内包されている
(3)他にはない革新性や 特別感がある

 一方、高級ブランドとなって世界で高く評価されている(ごく一部の方にしか知られていない)日本製品の成功事例も、多くあります。もし関心をお持ちの方は、拙編著『ラグジュアリー戦略で「夢」を売る: 続・高くても売れるブランドをつくる!』(2021年)などをご参照下さい。ここまで高級ブランドを例に挙げて説明した理由は、高くても熱烈なファンを生む価値づくりが これからの日本の商品開発・管理の決め手であり、文化を創るラグジュアリーを目指そう、というのが私の主張であるからです。

 「熱烈なファンを生む」価値づくりの商品開発の姿勢を怠り、コストダウンに頼ることは、やがてコストが全てとなり、せっかくの価値も目減りします。つまりブランドも企業も疲弊するということで、そのメリットは何もありません。

 われわれ商品開発・管理学会の果たす役割と責任は、このような理論の構築と実践へのリンケージにおいて益々重く、本学会の量的・質的拡大と深化を通じて 新たな日本の強さを是非、生み出して行きたいと考えております。

 また、本学会の目的にもありますように、生活者は、より高次な生活を営むための商品・サービスが 21世紀型自然環境保護の立場で生み出されることを当然と考えておられます。そうした消費者の感性に訴えた商品を作り込むため、商品開発に関する社会科学、自然科学、人文科学などとの学際的な協同研究を本学会は促進しています。

 横幹連合の中でも「商品開発・管理」につきまして、学会横断的に連携できることを願っておりますので、よろしくお願い致します。なお、本学会編著で「イノベーション」「デザイン」「ファッション&アパレルブランド」「ブランド戦略&ブランドマネジメント」などを掘り下げた新著を計画しています。

 

 □■□■□■□■□■□■□■□■

「商品開発・管理入門」2007年、中央経済社

内容説明

競争力のある高付加価値商品の開発とそれを可能にする生産基盤の強化・充実はどのように行われるべきか。
フレームワーク(基本枠組み)、組織と戦略、事例の3部構成で商品開発の基礎から応用までを解説する。

目次

第1部 商品開発のフレームワーク(商品開発の基本;商品開発のシステム化;商品開発管理とデザインマネジメント;商品開発とブランド設定)

第2部 商品開発の組織と戦略(商品開発のための人材育成;商品開発における戦略的提携;マーケティングにおける市場志向;商品開発とポジショニング;商品開発と知的財産戦略;新サービスの開発と最適価格―タクシー業界の事例)

第3部 商品開発の事例(技術経営(MOT)と経験価値)
大学における教育開発とマーケティング
プリウス型ビジネスモデル
環境・CSR マネジメントシステム「エコステージ」
時代の要請の応えた製品「Cook Do」の開発と育成)

 

「商品開発・管理の新展開」2022年、中央経済社

内容説明

まぐれ当たりではなく、“ヒットするべくしてヒットする”商品や、“高くても売れる”商品を生み出し、適切に管理するための理論を多岐にわたる分野から考察する。

 

目次

商品開発・管理研究の意義
機能、価格を最適化するコンジョイント分析
地球環境の持続可能性をめざす商品開発・管理
基礎技術・シーズから出発する BtoB商品開発・管理
BtoB企業の消費者ニーズ駆動型商品開発・管理
社会の再帰性と商品開発―クール・ジャパンからプラットフォームへ
化粧品デザインにおける経験価値とラグジュアリー戦略
商品開発・管理におけるイタリアンデザインの挑戦
メディア・リレーションズと新カテゴリー創造のための新商品開発
ゲーミフィケーションを取り込む商品開発・管理
市場志向を取り入れた組織における商品開発
商品開発・管理における研究者・技術者の使命と課題

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